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気づけば、部屋の真ん中に敷かれた布団の上にいた。
「……っ、…ぁ……」
斎藤が私の首筋に唇を寄せる。ぞくり、と身が震えた。
傷口に斎藤の唇や指が掠めるたび、鋭い痛みが走る。けれどそれさえも、甘美に思えた。
「傷が痛むか?」
「大丈夫、です。」そう答えた途端にまた涙が溢れた。痛みのせいじゃない。
「泣くな……」
心配そうに見上げてくる斎藤は、私の頰にそっと指を当てて涙を拭ってくれる。
私はその濃紺の髪をくしゃりと撫でる。この人のすべてが愛おしいと思った。
寒いから、という理由で襖を閉めてくれと懇願すると、恥ずかしいのかと聞かれて、頭が沸騰しそうになった。
斎藤は私の体に次々と口づけを降らせる。私も、彼の肩に一つだけ痕をつけた。彼の体に残る、私の生きた証。それがどれだけ愛しいことか。
彼と触れ合っている間は、全てを忘れられた。たた、幸せな感覚だけが、私の体を満たして行った。
私を抱きしめて眠る彼の髪を優しく撫でた。
それから頰にそっと口づけを落とす。
幸せすぎる、夢の続き。それに____別れを告げるように。
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作者名:雛菊 | 作成日時:2015年10月12日 23時