第十三話 酒と女は節度を持って ページ25
思えば、誘われるがまま、原田と永倉の間に座ったのが、Aの運の尽きだったのかもしれない。
夜は更け。いい時間帯になってきた頃には、Aは一言で言えば、出来上がっていた。
「遊女の服って分厚くて暑いんですよねぇ…」
そんなことを言いながら、上の着物を脱ぎ、襦袢だけに包まれている方を晒す。そして、鬱陶しいと簪を抜いた髪は、中途半端に崩れて垂れ下がり、妙な色気を振りまいている。
原田と永倉が飲め飲めと勧め、少しだけ、少しだけを重ねるたびに、ここまでになってしまった。
「お、おい、A。そろそろやめたほうがいいんじゃねぇか?」
永倉が目を逸らしながらそう言うが、Aは杯を下ろそうとしない。
「あれぇ?もうやめちゃうんですか、永倉さぁん…夜はこれからだろうが、付き合えこの野郎。」
「あの、Aさん?言葉遣いが、その、荒くないでしょうか?」
「私はいっつもこんな感じだろうが、なぁ?藤堂さんよぉ。」
「はいっ、いっつもそんな感じですね!」
藤堂も永倉も豹変したAに対してすっかりと萎縮してしまった。
「お前ら、飲ませすぎなんだよ!」
早々に酔いつぶれた近藤を介抱しながら土方が怒鳴る。
「Aちゃんって酔っ払うとそんな感じなんだねぇ。意外。」
沖田は呑気につぶやいてまた杯を傾けた。
「よっこらせっと、」Aはいつもなら考えられない掛け声とともに立ち上がると、ふらふらと歩き始めた。
「お、おいA!危ねぇからじっとしとけって。」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。」
「いや、足ふらふらじゃねぇか。」
そして、そのまま辿り着いたのはあろうことか斎藤の隣だった。
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作者名:雛菊 | 作成日時:2015年10月12日 23時