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ページ18

斎藤がこちらに向かって歩いてくる。


「大丈夫か、織笠。」

「はい。ご苦労様でした。」


そう言ってから、ふと考える。そういえば斎藤は私のことを“織笠”と呼んでいた。しかし、先ほどは____


「斎藤さん、もしかして今、名前を呼んでくださいましたか?」

「っ…」


斎藤の肩がびくりと揺れる。暴露てしまった、そんな顔をしながらこちらを恐る恐る見つめる。


「あ、あれは、咄嗟のことで…悪かった、馴れ馴れしく……」

「いやいや、責めてるわけじゃないんですよ。むしろ嬉しかったです。」

「そ、そうなのか?」

「はい。これからも呼んでください。」

「それでは…遠慮なく。」


斎藤はごほん、と咳払いをすると、私を真っ直ぐに見つめ、「A。」と呼んだ。

____あ、今呼ぶんだ。

なんだか面と向かってそんな真剣な顔で呼ばれると、物凄く気恥ずかしい感じがする。

それは私だけではないようで、斎藤はふいと顔をそらしてしまった。その耳がほんのり赤い。


「そ、そろそろ行きますか。」

「あ、ああ。」


組員に男たちを担いでもらって、私たちはまたぎこちなく歩き始めた。

第十一話 今更ながら…→←第十話 仕事と報酬



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作者名:雛菊 | 作成日時:2015年10月12日 23時

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