検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:116,432 hit

短編小説 /貴方が私を見ていなくとも/ ページ22

――――『腕にキス




―――恋慕。
ふと気になりその言葉を辞書で調べたのがきっかけだった。
『特定の異性を想い慕うこと』

「特定の、異性を……」
その一文を何度も読み返し、彼女はぼんやりとため息をついた。
瞼の裏に浮かぶのは、幼馴染の彼のこと。
サッカーが大好きで、いつも楽しそうに笑っていて、男女関係なく好かれている彼。

「恋慕……」
私は、彼のことが好きなのかな?

いつも傍にいるのが当たり前で、姉弟の様な関係だった。
昔は彼女の方が大人っぽく、彼の面倒を見る役目だった。
しかし、大人になるにつれて、彼女と彼の隙間は広がっていった。
もともとあまり目立った性格でない彼女は、教室の隅でいつも本を読んでいた。彼は、クラスのムードメーカーとして仲間と仲良くやっている。
自分なんて、眼中にも入っていないのだと。気付くまでに時間はかからなかった。

「なあ、彼奴、好きな人がいるって知ってた?」

聞きたくなくても聞こえてしまった会話だった。
年頃の男の子だ。好きな人の一人や二人いたって可笑しくはない、と思う。

ただ、これほど、胸が痛むのは。
その相手が、彼女自身でないということ。
聞いた訳じゃない。けど、分かる。

貶されてもいい。罵られてもいい。
『彼がアンタのこと好きだとでも思ったの?』
馬鹿にしたように嘲笑われても構わない。

この想いを伝えることだけ、許してはもらえないだろうか。

ふと外を見ると、はらはらと雪が降り始めていた。
マフラーをひっつかむと、雪の降る外へと駆けだした。

どうか、どうか、彼が想う人に気持ちを伝えてしまう前に。
一言だけでも、この想いを。

あがる息、数メートル先に、ポケットに手を突っ込み縮こまりながら歩く彼の姿があった。
「待って!」
叫ぶと、驚いた表情の彼。
「あのね!」
彼女の顔が真っ赤なのは、寒さでなのか、否か。
「ずっと、好きだった」
大きく見開かれた彼の瞳に彼女の姿が映る。

「貴方が私に興味がないことは知ってた。……でもね、どうしても伝えたかっただけ。それだけ」
それじゃあ、またね。そう言って踵を返したら、今度は彼に「待って」と腕を掴まれた。
そして、その細く華奢な腕に、そっと口づけを――――

「この意味、分かる?」
上目遣いでそう尋ねられ、彼女はますます赤くなるしかなかった。




――――『恋慕

短編小説 /貴方は私の欲望の儘に/→←短編小説 /コイツは俺の/


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆

ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーカラー

あずきいろ

ラッキーナンバー

8


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (167 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
546人がお気に入り
設定タグ:キス , 意味 , 零ーレイー   
作品ジャンル:得する話, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

容姿端麗に生まれ変わり隊(プロフ) - 『頬』と『額』は親しみ感が溢れてていいと思いました(o^−^o) (2019年4月29日 13時) (レス) id: 26de7c6d79 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - ちなみに頬へのキスは海外だと挨拶に近いですね。私も海外に住んでいるので親しい人とは頬にキスします。 (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - 月が綺麗ですねから来ました!!鼻梁は鼻筋の事ですよ。面白かったです!こんなことをしてくれる彼氏が欲しいです。続編も楽しみにしています!頑張ってくださいね!! (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - とりあえず完結しました〜!皆さま本当にお付き合いありがとうございました<(_ _)>近々続編を作るつもりなのでそちらも是非よろしくお願いします! (2017年2月11日 23時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - のわあああ、意味が意味なのでヤンデレ続きになって申し訳ないです……全然純愛じゃない…キスの格言に相応しくない…… (2017年1月31日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:零ーレイー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/  
作成日時:2016年8月31日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。