そして、愛するエストレラに永劫の詩を【短編集】

聖女の告解《4》 ページ5

2


嗚呼、神さま。おれは懺悔します。


……なんて、Aちゃんの真似してみたんやけど。どうも、おれらしくないわぁ。せやから、普通に話させてもらうで。


Aちゃん。あんたは自分のことを聖女やない、そんな持て囃されるもんやないって言うけど、それはこっちの台詞やで。

なんでAちゃんはおれのことを「神さま」なんて呼ぶん？たしかに、Valkyrieは熱狂的な信者がおるし、その中でおれたちを神格化しとる人たちもおる。せやけど、Aちゃんは別にValkyrieのファンやないやろ？だって、Aちゃんにとっておれらはぎょうさんおるアイドルの中の一部やもんな。それやのに、「神さま」なんて。なんや距離が遠くなった気がするわぁ、元々近いもんでもなかったけど。


でもな、Aちゃんが自分のことを卑下するようにおれもそんな大層なもんやないんやで。お師さんに助けてもらえへんかったら、惨めにゴミ捨て場でのたれ死んどったようなでく人形や。

だから、そんな名前で呼ばんといて。特にAちゃんにそうやって呼ばれたら、どうしようもないぐらい申し訳なくなるんよ。



……うん、そうやなぁ。



なあ、Aちゃん。Aちゃんはさっき、自分は偽善者やって言うたけど、おれはそれでもええと思うんよ。ちょっと、例え話をしてええ？
あんな、例えば怪我をして動けへん猫がおったとする。


周りを通る奴らは可哀想やとか不憫やとか思いながらも、何もせえへんままその猫の横を通りすぎるんよ。やけど、一人の子供だけがその猫に駆け寄っていく。
その子は猫を抱きしめて怪我の手当てをしてやって、それからあったかいお風呂に入れてやるんや。美味しいおまんまやって食わせたる。優しい子やって思うやろ？でもな、その子はただ自分の評判の為に動いただけなんや。

可哀想な猫を助けてやったら、周りの人らは「あの子はええ子や」「優しい心をもっとる」なんて好意を覚えてくれる。



平たく言うと、その子のやった事は自分の評判の為の偽善なんや。

聖女の告解《5》→←聖女の告解《3》

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す