そして、愛するエストレラに永劫の詩を【短編集】

聖女の告解《2》 ページ3

……私に感情がないのに、どうしていつも悩み相談に答えることが出来るのかと思ったでありましょう。


口先だけのアドバイスなら、小説などの本を読めば出来るのです。私は本で得た知識で「ああ、この人はこういうときにこういう言葉をかけてほしいのだな」と考え、そのとおりの台詞を口にしているに過ぎません。
私にとって人生とは、簡単な舞台のようなものなのです。そこで頭に叩き込んだ台詞を、適切なタイミングで出すことに集中していれば良いのです。


だからでしょうか。稀に、私がだれかを救おうとすることに対し、後ろ指をさして「偽善者だ」と罵るような人もいます。ですがそれは紛れもない事実であり、私には否定のしようがないのです。きっとその人たちは、私の言葉に本当は何の感情もこもっていないことを理解出来ているのです。


要するに、皆の言う「優しいA」は私が私の目的の為に作り上げたただの幻想、偽物の姿でしかないのです。皆、私の偽善に騙されてしまっているだけなのです。


ここで私が皆に申し訳ないという感情を抱けたなら良いのですが、生憎そういう気持ちすら持ち合わせていないのです。
私には自身の周りの出来事や人物の全てが、自分とは無関係などうでもいいもののようにしか思えません。同時に、こんな自分のことを自分自身ですら可哀想だとは思えないのです。



つまるところ、私は心底冷たい人間なのです。他人どころか自分自身にさえ興味を持てない。まるで血の通っていない死体のようなものです。

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