メカクシ団(非公式)の日常9

一人称 byイチイ ページ48

「てゆうかパピコて…なんか久々に食べるわ〜」

パキ、とパピコを二つに割り、その一つを「ほれ」と隣にいたグレンに渡す。
グレンは少しびっくりしていたが、ありがとうと呟いてそれを受け取った。

「うわ、これめっちゃ溶けてんじゃんかよシマー。…あ、シマ子？」

言いながらソファに倒れこんでいるシマ子ことシマを見る。
シマはぐったりとしたまま「うるせぇ」と返した。

「…なんであいつあんなんなってんの？」

「あれじゃねーか？ほら、あいつコミュ障じゃん」

「あーね。なるなる」

グレンの説明にパピコを咥えながら納得と言うように頷く。
外は太陽光がジリジリと焼きつけ、しかも日本という国は無駄に湿度が高い国だ。
蒸し風呂国と言ってもいいと思う。
てかもう日本改名して蒸し風呂国でいんじゃね？

「あー、ハワイ行きたい…」

「いきなりどうしたの？イチイ」

あ"〜、とウンザリ顔でそう呟やくと、不意に聞こえた声。
その声の方に目を向ける。

「おー、ミラちゃん。…あーっと、ミラ…君？」

そこには、男になっても尚可愛い顔をしたミラちゃんがいた。

「ミラ…君？」

キョトンとした顔でおうむ返しをしてくるミラちゃんに苦笑いを浮かべる。

「…嫌？」

「ううん、なんか新鮮！」

パアッと効果音がつきそうな笑顔を向けてそう言うミラちゃん。
…あ、ミラ君。
っていうか、

「…なんでそんな可愛いのミラ君はぁぁああああ」

「きゃあ！？」

ガバァと前屈みになってミラ君を抱きしめる。
…あれ、俺変態じゃね？
………まいっか！

「人の妹にセクハラすんな」

ビシィ！と頭に痛みが走る。
いたっという呟きは次の声でかき消された。

「なに堂々と俺の妹にセクハラしてんだお前は」

「いったぁ〜…セクハラって…酷いなぁ、私…あー、俺が思ってた事を言うなんてさ」

「思ってたのか…」

「うん。思ってたね」

はぁ〜とため息を吐くグレン。

「…ていうかグレンさぁ〜、一人称変えようよ。いや、俺っていうのもいんだけどさぁ…なんか、ねぇ？」

「はあ？」

「ね？ね？変えてみようよ。私、とかにさ！」

「なんで…」

「いいから！」

「…しょーがねーなぁ」

呆れた声でそう言うグレン。
ヤッタネ！

「…私」

「…」

「…なんだよ」

「やっぱダメ。グレンは一人称俺のままでいい」

「はあ？」

「絶対私とか言っちゃダメだから」

「なん…おい、イチイ！」



グレンの「私」を誰にも聞かせたくないなんて、死んでも言わない。

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