シダケタウンにて ページ6
柔らかな日射しが地面を照らす。
若草の香を纏った風が、ソッとレイラの頬を撫でる。
パートナーを出すでもなく、黙々と彼女はシダケへと歩を進めていた。
既にキンセツシティを出て数時間、休みなしで歩いている筈のレイラ。
全く疲れることなく早足で歩き続ける彼女の体には、きちんと昼食のエネルギーが回っているのだろう。
「昼……長くなったな……」
まだ高い太陽を見上げ、小さく呟く。
現在時刻は午後4時を回っている。
空から視線を戻した彼女の目は、しっかりと目の前に広がる小さな町を捉えていた。
「レイラちゃん？」
のんびりと町を探索するレイラへ声が掛かる。
暇をもて余して彼女の横にいたヒノヤコマも、声がした方を振り向いた。
そこには見覚えのある男性の姿。
「……あ」
若干目を細めたレイラは小さく会釈する。
彼女に声を掛けたのは、買い物袋を両手に下げたミツルの叔父だった。
「……すみません」
目の前に準備される料理に思わず頭を下げるレイラへ、ミツルの叔父と叔母は笑みを溢す。
「いいのよ、ミツル君のお友達でしょう？」
「きちんとしたお礼も出来ていないからね。夕飯ぐらいはご馳走させてくれ」
そう言って向かいに座った二人へ、彼女は再び小さく頭を下げる。
フードを外したレイラは手を合わせ、小さく「いただきます」と呟くと料理に箸を付けた。
「あそこ……いつもは誰か……いるんですか……？」
夕飯を食べ始めてから初めて口を開いたレイラが示した場所へ二人は視線を集める。
そこには、3脚の椅子が置かれていた。
「あぁ、一つはミツル君の椅子だよ。君とキンセツシティで会って、ここに帰ってきてすぐに旅に出てしまったけどね」
少し寂しそうに笑った叔父に代わり、叔母が口を開く。
「残りの２つは娘と、その彼氏さんの分よ」
小さな相槌を打つレイラへ、彼女は続ける。
「この町の隅にあるトンネルは知っているかしら？そこを一人で掘り続けている男性がいるの。それが娘の彼氏さん。
娘ったら心配性でね、毎日夜遅くまでそのトンネルに通っているの。「反対側に彼がいるのが分かってるんだから！」ってね」
今日はいつもより遅くなりそうね、と付け加えた叔母に、レイラは再び小さく頷くと空の皿へ箸を置いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
CrazyBook(プロフ) - コメントありがとうございます！本当に気長にお待ちください。 (2019年8月12日 9時) (
レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
菜々美 - この作品好きです！ゆっくりでいいので更新頑張ってください。 (2019年7月18日 16時) (レス) id: 179628e6fd (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - かしわさん» コメントありがとうございます！完結するまで更新し続けますので気長にお付き合いください！ (2019年3月24日 21時) (レス) id: 8c59f4ad06 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ - この作品好きです。更新頑張って下さい。 (2019年3月23日 1時) (レス) id: 356d08c55f (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - ルインさん» コメント、ありがとうございます！嬉しい限りです！これからも気長に読んでください！ (2018年7月19日 19時) (レス) id: 31b46a970e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：CrazyBook | 作成日時：2018年3月28日 22時
