ハサミ ページ46
攻撃を与えれば倍のダメージが返ってくる。
“カウンター”も手強いが重量級のケッキングは攻撃を食らおうが、そう簡単には怯まない。
グライガーが距離を詰めて攻撃を仕掛けるも、力づくで攻撃を放ってくるのだ。
そこはどうしても素早さだけでは補いきれない。
再び吹き飛ばされて壁に激突するパートナーを前に、トゲピーを抱き締めるレイラの腕が強ばった。
「もう……もういいよグライガー……」
彼女の口か溢れるのは珍しく掠れたような弱気な声。
地面にぐったりと横たわっていたグライガーも、その声を聞くなり耳を立てて顔をあげる。
そしてすぐさま体に鞭を打つようにして無理矢理に起き上がり、レイラの足元へと低空飛行で擦り寄った。
彼の体は既に限界が近く、次に攻撃を食らえば戦闘不能になるのは目に見えている。
「今日は……引こう」
意を決したように静かに口を開いたレイラにグライガーが息を呑む。
「もう少し……特訓を詰んで……」
「ぐらいがっ！！」
自身を宥めるようなマスターを遮り、グライガーは今までにない程に声を尖らせた。
近付けてきたモンスターボールを払い退け、ハサミ状の手をレイラに握らせる。
「まだ、僕、戦える！まだ、負けてない！
僕、負けない！だから……信じて！」
白濁した瞳に灯る光に圧倒されたのか、驚きを隠すことなく瞬きを繰り返すだけだったレイラはゆっくりと首を上下に動かした。
「……アンタがそう言うなら……アタシは信じる」
行ってこい、と告げた声には弱気など微塵も無い。
ただ純粋に信用してくれるレイラへグライガーは短く鳴き声を上げた。
その様子を見守っていたセンリの口元には薄い笑みが浮かぶ。
「トレーナーとポケモンの信頼は問題ないようだな。しかしこの状況はそう簡単にひっくり返される訳にはいかないんだ。勝ちは譲れないぞ」
「この子が勝つって言ったら……勝つ」
臆することもなく、揺るぎない紅い瞳でセンリを見据えるレイラが腕を一振りすれば高く飛び上がるグライガー。
そのままケッキングへ急降下する様子から“翼で打つ”または“鋼の翼”を予測したセンリが指示を飛ばす。
ケッキングが身構え、頃合いを見計らって眼前へ迫ったグライガーへ“気合いパンチ”を放つ。
それと同時にグライガーの翼……
ではなくハサミがケッキングへと襲いかかった。
一同の理解が追い付く間も無く、グライガーは相手とすれちがうようにして着地を決める。
その背後でケッキングはフィールドへ静かに体を横たえた。
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CrazyBook(プロフ) - コメントありがとうございます！本当に気長にお待ちください。 (2019年8月12日 9時) (
レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
菜々美 - この作品好きです！ゆっくりでいいので更新頑張ってください。 (2019年7月18日 16時) (レス) id: 179628e6fd (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - かしわさん» コメントありがとうございます！完結するまで更新し続けますので気長にお付き合いください！ (2019年3月24日 21時) (レス) id: 8c59f4ad06 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ - この作品好きです。更新頑張って下さい。 (2019年3月23日 1時) (レス) id: 356d08c55f (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - ルインさん» コメント、ありがとうございます！嬉しい限りです！これからも気長に読んでください！ (2018年7月19日 19時) (レス) id: 31b46a970e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：CrazyBook | 作成日時：2018年3月28日 22時
