二人歩き ページ47
「……“ハサミ……ギロチン”……」
目の前で動けなくなったパートナーを前に、センリはやっと状況を理解したかのように声を漏らした。
彼の呟いた技名に小首をかしげるレイラはヨロヨロと戻って来たグライガーをとりあえず、と言いたげにトゲピーと合わせて抱き抱える。
「師匠……“ハサミギロチン”って……何」
「あ、あぁ……」
歩を進めてきた彼女へ我に返ったセンリがケッキングを戻し、視線を向ける。
「通常【一撃必殺】と呼ばれる技の１つだ。相手に食らわせられることは非常に難しいが、万が一これが当たったとすれば……」
「相手は……確実に倒せる……」
確認口調ながらも確信を突いているレイラにセンリは「その通りだ」と頷いて見せる。
そしてそのまま彼は軽く目を閉じると低めの天井を仰ぐ。
その様子を見つめるレイラはパートナーを大切そうに抱えたまま急かす事はしない。
しばらくの静寂に包まれたバトルフィールドはセンリの安堵の溜め息によって言葉を取り戻した。
「ジムリーダーとしては言い様の無い程に悔しい。だがな、
師匠として……いや、
一人の親としてお前の事を誇りに思う。
よくやったな、レイラ」
口元に薄いながらも柔らかな笑みをたたえ、センリは優しくレイラの頭をフード越しに撫でる。
慣れないその行為に体を強ばらせるも、レイラは大人しくセンリの手に頭を任せる。
「アタシ……前に進めてる……？」
ボソリ、と今にも消えそうな声で紡がれた問いにセンリは手を止めた。
そしていつぞやのように、ゆっくりと彼女と目を合わせると無言で大きく首を縦に振る。
「ゆっくりでも、一歩ずつでも良い。
大切な仲間と前に進み続けるんだ」
いいね、と念を押されこのうえなく素直にレイラは「わかった」と簡潔に口を開いた。
相変わらずの様子にどこか安心したのか、一瞬頬を綻ばせたセンリは義娘の背中を軽く叩いて促す。
「とにかくお疲れ様、外まで送ろう」
「……うん」
互いにあまり話すことはしない性格の二人の間では交わされる世間話も、他愛のない会話も顔を見せる事はない。
それでも、二人でジムの外へ向かう道のりはしばらくぶりの二人歩きだった。
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CrazyBook(プロフ) - コメントありがとうございます！本当に気長にお待ちください。 (2019年8月12日 9時) (
レス) id: 89127ffd6d (このIDを非表示/違反報告)
菜々美 - この作品好きです！ゆっくりでいいので更新頑張ってください。 (2019年7月18日 16時) (レス) id: 179628e6fd (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - かしわさん» コメントありがとうございます！完結するまで更新し続けますので気長にお付き合いください！ (2019年3月24日 21時) (レス) id: 8c59f4ad06 (このIDを非表示/違反報告)
かしわ - この作品好きです。更新頑張って下さい。 (2019年3月23日 1時) (レス) id: 356d08c55f (このIDを非表示/違反報告)
CrazyBook(プロフ) - ルインさん» コメント、ありがとうございます！嬉しい限りです！これからも気長に読んでください！ (2018年7月19日 19時) (レス) id: 31b46a970e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：CrazyBook | 作成日時：2018年3月28日 22時
