君が僕の希望だから 7

304：本番に強いタイプ ページ8

サクラビスが頷くと、王子は笑って彼女を抱き締めた。


「ははは、そんなわけないだろう。姿形が違っても、僕らは同じ生き物なんだ。友達にも、仲間にだってなれる。さあ行こう、本当の君をみんなに紹介したいんだ！」
「…っ！ラビース！」


臙脂色の幕が降りると、観客席から拍手がわき起こった。途中でロケット団の乱入があったが、舞台は大成功。むしろロケット団をそういう役柄の演者だったと思っている者もいるほどだ。

一度幕が上がり、役者全員(人もポケモンも)が並び、一斉にお辞儀をした。桜色のドレスを纏ったAも、サクラビスの隣にいる。
サトシとピカチュウ、そしてヒカリとポッチャマ、タケシもめいいっぱいの拍手を送り…観客席は割れんばかりの拍手喝采で溢れた。






「あのっ、ぐすっ…ほっ本当にありがとうございました！！っ、ま、まさかっこんなにたくさんの人が観に来て、喜んでくださるなんて…そのっほんと嬉しくて…っ！！」


興奮で紅潮した頬にぼろぼろと涙を伝わせながら、青年は何度もAに頭を下げた。

普段着に戻ったAがこちらこそありがとうございました、とお辞儀を返していると、裏に通してもらったサトシ達がやってきた。


「A！お疲れ様！」
「すっごく素敵だったわ！！」
「つい見入ってしまったよ」
「サトシ、みんな。…ふふ、私はちょっと疲れちゃったかな」


はにかんだAはそう言うが、顔には疲れよりも達成感が色濃く表れている。

未だに涙腺が崩壊したままの青年の肩を叩いた団長が、Aに笑いかける。


「いや、本当にありがとう。助かったよ。途中で変な輩が落ちてきたときはどうなることかと思ったが…Aちゃんの機転のおかげで助かった」
「素人の私に色々教えてくださってありがとうございました。お役に立てたなら良かったです！」
「…っ、う、ぐすっ…」
「おいおい、いつまで泣いてんだよ。ほら、成功を祝って打ち上げするぞ！お前の初の大舞台を祝うんだ、お前がいなきゃ始まらねーだろうが！！」
「はっ、はいぃ…っ」
「Aちゃんもくるか？」
「いえ…私は代役なので」


気持ちだけいただきます、と礼儀正しく言えば、団長はそうか、残念そうに微笑んだ。

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