302:本番に強いタイプ ページ6
「なんだかんだと言われなくても!」
「名乗ってあげるが世の情け!」
響き渡った力強い声に、固まっていた青年がAを守るように前へ出た。
ノリがいいのか、ロケット団を役者だと勘違いしたのかは謎だが、何故か照明係が眩しいスポットライトで彼らを照らし出す。
「世界の破壊を防ぐため!」
「世界の平和を守るため!」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリーチャーミーな敵役!」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆けるロケット団の2人には!」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!」
「ニャーんてニャ!」
「ソーナンス!!」
どんな状況であれ、名乗り口上をばっちり決められるのは彼ららしい。
「え、えぇーっ!?ニャ、ニャースが喋ってる!?!?」
青年は演技を忘れ、素に戻って目を白黒させた。これは非常にまずい。どう動いたらいいか分からないまま、Aは必死に頭を巡らせる。
「行くわよハブネーク!!」
「マネネ、俺達も行くぞ!」
「マネマーネ!」
「ハブネーク、ポイズンテール!!」
生身の人間に突っ込んできたハブネークに、青年は完全に涙目になった。技を仕掛けられている恐怖もあるのだろうが、ここまで上手くいっていた舞台が台無しになってしまうのが何よりショックなのだ。
サトシがもう見ていられない、とピカチュウをけしかけようとするが…それより先にAが動いた。
青年より前へ出て舞台袖に視線を送ると、ハブネークに向かって両腕を突き出す。その瞬間、Aの前に光のシールドが展開し、ハブネークを弾き飛ばした。
「え、え!?えぇっ!?」
「お怪我はありませんか?今この辺り一帯に魔法がかけられたのです。それによってポケモンが人の言葉を話すようになりました。あの者達は私の国ではならず者、何でも見境なく奪う盗賊です。この混乱に乗じてこの国から何かを奪おうとしているに違いありません!どうか王子様、彼らを退け、王子様の『大切なもの』をお護りください!!」
Aは今咄嗟に考えた設定を一息にまくし立てた。『大切なもの』という言葉に込めた思いに、青年は気付いてくれただろうか。
Aの今の台詞を意訳すれば「そういう設定にして演技を続けよう。彼らを倒して、この舞台を守ろう」となるのだが…。
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こうもり(プロフ) - 時間の止まったリスさん» ご感想ありがとうございます!DPはリメイクもされたのでおすすめです!パートナーとの冒険はすごく楽しいですよー! (2022年4月30日 21時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
時間の止まったリス - これを機にポケモン始めようかな、なんて思いました(めちゃ時代遅れですね)。リスはピカチュウとポッチャマ時代で止まってますので。へへ (2022年4月26日 10時) (レス) id: d39a98933d (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - 緑茶さん» こちらこそコメントありがとうございます!DPいいですよね…!!長いお話を読んでくださっただけでなく感想までいただけてすごく嬉しいです、ありがとうございます! (2020年7月31日 20時) (レス) id: a41badf38a (このIDを非表示/違反報告)
緑茶(プロフ) - たまたま見つけて気付いたら全て読んでいました。DP私も好きなのでとても面白かったです。自分の夢に向かって歩き出す彼らを見ていたら涙が止まりません。素晴らしい物語をありがとうございます! (2020年7月31日 1時) (レス) id: ab02c22683 (このIDを非表示/違反報告)
こうもり(プロフ) - moekaさん» コメントありがとうございます!最後のページに一覧を載せておきました! (2020年2月22日 6時) (レス) id: a41badf38a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2017年1月1日 20時