君が僕の希望だから 6

257：きらきら ページ9

「A、」


最初に声を出したのはサトシだった。


「これ、Aに渡そうと思ったんだ」


ちょっぴりはにかみながら、手の中の紙袋を差し出す。


「…実は、私も。これサトシに」


度重なる偶然に驚きながら、Aもサトシへ手を伸ばした。

今度はサトシが驚く番だった。
なんだこの不思議な展開、と思いつつ、2人は相手の贈りものを受けとり、了承を得て中身を取り出した。


Aの手に転がり出てきたのは、Aがサトシに贈ったものと同じデザインのミサンガだった。
ただし、サトシがAに渡したものは紐が白、石は淡い緑である。


どうやらサトシが目を惹かれたのは、Aが見ていたミサンガのすぐそばにあった色違いのこれだったらしい。


「…それ、パッて見たときに、Aみたいだなって思ったんだ」


選んでくれた理由まで、そっくりそのままだ。ここまでくるとおかしくなってきて、Aは破顔してサトシに答える。


「私も。サトシみたいって思って…サトシに贈りたくなったの」


サトシは一瞬瞠目し…そして、Aがさっき思い浮かべたのと同じ、太陽のような笑顔を見せた。


「ミサンガはね、願いを込めて結ぶんだ。紐が切れると願いが叶うって言われてるんだよ」


Aとサトシのやりとりを微笑ましく見守っていた男性が教えてくれた。

それを聞いたサトシは少し考えると、青いミサンガと自分の腕をAの方へと差し出した。


「せっかくだし、Aが結んでくれないか？」


Aは快く頷くと、サトシの左腕にミサンガを付けた。サトシとポケモン達の夢が叶いますように、と願いを込めて。


「じゃあ…私もお願いしていい？」
「もちろん！」


今度はAが左腕を伸ばす。サトシが白い紐に結び目をつくる間、何を祈ろうか迷っていたが、最後にきゅっと結われたときに、ポケモン達の願いが叶いますようにと心の中で呟いた。


「ありがとう！」
「へへ、お揃いだな！」
「！ そうだね！」


サトシが掲げた左腕で、真新しいミサンガがきらりと輝いた。


「…あっ、おーいサトシ、Aー！！」


そのとき、遠くからジュンの声が聞こえて、買い物袋を提げたジュンがこちらへ駆けてきた。


「ジュン！」
「お前、どこ行ってたんだよ」
「お前らこそ、勝手に俺から離れんなよな」


半目になったサトシに「離れたのはそっちだ」と言われ、ジュンは不思議そうに頭を掻いた。


「そうだっけ？」
「掘り出しもの、あった？」
「おう！」

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