君が僕の希望だから 6

285：町から町へ ページ38

「じゃあな！余計な邪魔が入ったりしたけど、楽しかったぜ！」
「私達もよ。ジュン、誘ってくれてありがとう！」
「ああ。元気でな」


ヒカリとタケシからの挨拶をニカッと笑って受けたジュンは、不意にAに目を止めると、ぐいっと腕を引き寄せる。


「な、A。前誘ったときに断ったのって、今はもう済んでるゴタゴタのせいか？」
「…へ？」
「とぼけんなって。俺と一緒に来ねーかって話。まさか忘れたってのかよ？」


普段の彼とは違い、トーンを落とした落ち着いた声。顔を寄せて話しているため、A以外には聞こえていないようだが、一人例外がいた。


「もし変装云々で断ったってんなら、もっかい考えてみねーか？絶対悪いようにはならねーって！バトルのイロハだって教えてやれるし、結構楽しいと思」
「なーに話してるんだ？」


サトシの声が降ってきたかと思えば、Aはジュンが掴んだのとは反対の腕を強く引かれ、彼から引き離された。
ジュンに取られまいとするようにAの両肩を抱くのはサトシだ。


「Aは俺達と旅したいって言ってたの忘れたのかよ」
「う、うん。お誘いはすごく嬉しいしありがたいんだけど、前の事情を色々抜きにしても、私はサトシ達と旅したいんだ」


何でこの体勢に？と戸惑いながらもサトシの言葉を肯定する。

ジュンは「やっぱダメかー」と残念そうに唇を尖らせる。だがふと思うことがあったのか、すぐにいつものエネルギッシュな表情に戻った。


「お前を旅仲間にするってのは潔く諦めるよ。けどな、次会ったときは今度こそバトルだ！今回はタッグ組んだからノーカン！それからもう俺に嘘付くなよ、いいな！もし破ったらぜってー罰金だかんな！！」


前回よりも約束事を一つ増やすと、ジュンは挨拶もそこそこにケンゴ達の手伝いに戻ってしまった。


「バトルの約束するの、私じゃなくてサトシの間違いじゃないかな」


Aがぽつんと呟くと、サトシはハッとしたように、むすっとした表情からいつもの表情に戻る。


「…ぁ、いや。ジュンはAとバトルしたいんだよ。俺だってお前とバトルするのすごく楽しいしさ！けど、俺とも約束してくれたっていいのにな」
「ほんと嵐みたいよね、ジュンって」
「さ、ポケモンセンターに行こうか」


タケシに頷き返すと、サトシ達は揃ってショッピングモールを後にした。

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