【銀魂】光翼鳥の剣：re1 (ページ42)

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四十話ページ42

居心地の悪そうに身体を揺らす土方。

それを見て、Aは彼を不器用な人間だと思った。

そして、それは彼の実直さからくるものなのだと。

近藤の性格上、副長である彼が組織の汚れ役を担っているであろうことは容易に想像がついた。

土方は、得体の知れないAを疑わずにいられる立場にない。

そんな人間は、組織にとって必要不可欠だ。

だからAも土方の当たりの強さに納得していたし、まして憎むことなど出来るはずがなかった。

しかし、今日の昼間はつい頭に血が上って、嫌な態度をとってしまった。

彼に言われたことは当然今でも不服ではあったが、それも仕方がないことだと納得して、Aの方から謝罪しようとしたのに、である。

彼はこんな夜中にわざわざAを待ち、彼女から出かけた言葉を断ち切って自分の方から謝罪した。

今の瞬間に至るまでに、彼の中でどのような心情の変化があったかは知る由もない。

しかしAは、今見ている彼が、彼の本当の姿なのだと直感していた。

いずれ出ていく得体の知れない女の小さな不満さえ、放っておけない誠実な人。

Aはそんな彼だからこそ、最初に伝えたいと思った。

「…………私こそ、ごめんなさい」

先に謝罪の言葉を口にすれば、土方は「別に」と素っ気ない返事を寄越す。

「……冷えてきたな。さっさと入れ」

「土方さん」

門の中に入ろうとした土方を、Aはその場で呼び止めた。

土方の足が止まる。

振り返る土方の目を、Aは瞬きさえ忘れたかのように真っ直ぐ見据えた。

銀時が新たに手にしたものを自分も手にしたい。

この江戸で新しい一歩を踏み出す為に、ここで一度、過去を清算する。

「―――私は攘夷志士でした」

「…………………」

知っていたはずはないが、土方は動じなかった。

しかしその瞳が、Aの手足の動きを観察するように動く。

Aは静かに続けた。

「攘夷戦争の最中に大怪我を負って、戦線を離脱しました。それから数年間、私を救ってくれたお婆さんが亡くなるまで山奥で暮らしていたのを、今こうして江戸まで下りて来たんです」

土方はAの目をじっと見返した。

互いに一瞬たりとも逸らさない。

「…………何故それを今言った？」

「貴方に言いたくなったからです」

「万事屋が見つけてきた友人ってのが関係あんのか」

「はい」

Aは間を開けずに答える。

土方の口調は厳しかったが、その視線は今迄よりも鋭いものではなかった。