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33話side紫 ページ33

帰りの車の中で、すっかり眠ってしまったAの横顔を盗み見る。

穏やかな寝顔に、思わず笑みが零れる。

と同時に、自分は彼女に異性と認識されていないのかと悲しくもなった。

今日感じた気持ちは明らかに嫉妬。

どうしてそんな感情になるのか、なんて今更愚問だ。

この感情はよく知っている。

生きてきた中で何回か経験した気持ち。

今更誤魔化すなんてかっこ悪い事はしない。

紫「さて…どうしたもんかな。」

ため息とともに漏らした言葉。

誤魔化すことはしない…けれど、教師としてこの気持ちを持ち続けるのはいささか問題だ。

『どっ…したんですか』

紫「うおっ‼」

独り言のはずが、掠れた返事が返ってきて思わず声を上げる。

『ケント先生…前、見てください。』

慌ててAの方を見れば、ムスッと前を指さしていた。

紫「起きてたのか…」

『寝てました…目が覚めました…』

どうやら寝起きが少し悪いようだ。

『すいません…運転してもらってるのに寝てしまって。』

紫「あー、いいよいいよ。引っ張り出したのは俺だからな。」

ありがとうございます。と小さく呟くと眠そうにパチパチと瞬きを繰り返すA。

紫「もうすぐ着くから踏ん張れー。」

俺の言葉にコクリと頷く。

『先生…』

紫「んー?なんだ?」

『さっきの…どうしたもんかって、もしかして私の事ですか…?』

Aの言葉に一瞬ドキリと胸がはねる。

紫「なっ何で…?」

『私が助けてなんて、お願いしたから…先生困ってるんじゃないかなって…』

紫「そんな事か…」

『もしかしたら面倒くさい事お願いしたのかなって…』

紫「考えすぎだよ。Aは余計な事考えなくていい。」

くしゃくしゃと頭を撫でれば、Aは目を細めた。

その表情にうるさくなる心臓。

『先生…』

紫「ん?」

『私、頑張りますね!助けてくれた、先生と…アルスの皆のためにも。』

Aの言葉と共に車を止める。

もう寮はすぐそこだ。

紫「ありがとな。」

『お礼を言うのは私の方です。本当にありがとうございます。』

何から何まで、と付け足してAは車を降りる。

流石に寮までは一緒に行けないため、たくさんの荷物を抱えたAを見送った。

フラフラと歩く足取りは危なっかしくて、そんな姿でさえ愛おしいと感じてしまうのは…

そこまで考えてフルフルと頭を振る。

俺は、教師としてこれからもAに接していかなくては…

1人の男としての感情は見て見ぬふりをしよう。

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炭酸(プロフ) - 剣城萌江さん» ありがとうございます(^^)こんな駄作ですが…先生をより好きになるお手伝いが出来て私は幸せです! (2017年7月8日 10時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
剣城萌江(プロフ) - 最近リア友にアルスマグナを布教され、見事に沼にハマった新米メイトです。ケント先生推しなので最初からドキドキワクワクしました!これを読んでもっと先生のことが好きになりました(*´ω`*) (2017年7月6日 16時) (レス) id: 869f1bba53 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - あさべるさん» ただいまです!ありがとうございます(^^)読みに来てください!ゆっくりではありますが、書き始めてますので、気長にお待ち下さい(^_^;) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - アメさん» ご無沙汰してます。長らくお待たせしました(;´Д`)お気遣いありがとうございます(^^)アメさんもお気を付けて! (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - 韮さん» ただいまです!はい!のんびり楽しく頑張ります(^^) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:炭酸 | 作成日時:2017年2月22日 0時

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