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22話 ページ22

「地味子―。これ、お願い。」

『えっ…』

教卓の上に乗せられているのは、提出物のノート。

さっきの授業で回収され、日直が職員室まで運ぶように指示されていたものだ。

いつもの私なら…ここで何も言わず頷く。

「いや、えっじゃなくて。いつもみたいに運んどいてって言ってんの。」

普段とは違う私の態度が気に食わないのか、私へと詰め寄ってくる彼女。

「何?なんか文句あんの?」

私にしか聞こえない、小さな声で呟かれる。

「また痛い目にあいたいわけ?」

その言葉に先日の出来事がフラッシュバックした。

まだ傷も治りかけてない体をギュッとこわばらせる。

私の様子に気付いた彼女はフッと鼻で笑ってそのまま背中を向けた。

このまま言いなりになれば何も変わらない。

せっかく私に手を伸ばしてくれた人たちがいるのに…

『ぁ…あの!』

だから私は思い切って声を上げる。

「何?」

『じ…っ。自分で、行ってください…』

私の発した一言に彼女の顔が一気に歪んだ。

「はあ!?口答えしてないで、さっさと行けよ。お前が行かないと、私が先生に怒られんだろ。」

『ダッだけど…頼まれたのは私じゃないし…』

不穏の空気を感じたのか、クラスメイトの視線が少しずつ突き刺さり始めた。

「だから、代わりに行ってってお願いしてんじゃん。」

『でっ―ー』

「今までは行ってくれてたでしょ?急にどうしちゃったのー?」

クラスの視線に気が付いた彼女は、先ほどよりも物腰柔らかく話してくる。

コソコソと聞こえ始めた周りの声に、私は俯いた。

「ねえ。この間の事忘れてないよね?さすがにそこまでバカじゃないよね?」

今度は小さな声が耳元で呟く。

「行ってくれるよね?」

ダメ押しの一言に、思わず首を縦に振りそうになった時。

ため息が聞こえ、次いで椅子が引かれる音。

「お前さ、もうちょっと頑張れよ。」

誰かが隣に来た気配を感じて見れば、絆創膏が目に入った。

『か…神生君…』

赤「先生に頼まれたのはお前だろ?何でまたこいつに仕事押しつけんだ。」

「押し付けてなんかないし…お願いしただけだよね?」

赤「お願いじゃねーだろ。押し付けたんだろ。」

「ちっ違うって…」

神生君の追及に、笑顔のひきつる彼女。

「聞いている限りでは、脅迫にも取れましたね。」

今度は反対側に人の気配。

『泉君…』

青「正当な理由がないなら、自分で運んで下さい。」

2人から責められた彼女は、悔しそうにノートを持って教室を出て行った。

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炭酸(プロフ) - 剣城萌江さん» ありがとうございます(^^)こんな駄作ですが…先生をより好きになるお手伝いが出来て私は幸せです! (2017年7月8日 10時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
剣城萌江(プロフ) - 最近リア友にアルスマグナを布教され、見事に沼にハマった新米メイトです。ケント先生推しなので最初からドキドキワクワクしました!これを読んでもっと先生のことが好きになりました(*´ω`*) (2017年7月6日 16時) (レス) id: 869f1bba53 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - あさべるさん» ただいまです!ありがとうございます(^^)読みに来てください!ゆっくりではありますが、書き始めてますので、気長にお待ち下さい(^_^;) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - アメさん» ご無沙汰してます。長らくお待たせしました(;´Д`)お気遣いありがとうございます(^^)アメさんもお気を付けて! (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - 韮さん» ただいまです!はい!のんびり楽しく頑張ります(^^) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:炭酸 | 作成日時:2017年2月22日 0時

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