13話 ページ13
『けど…何から話せばいいのか…』
頷いたはいいものの、戸惑う様子を見せるA。
紫「んじゃ、聞いてもいいか?」
『はい。』
紫「この間、Aの事追いかけてたやつらは誰だ?」
『あぁ…あれは中学の同級生です。』
紫「どうして…」
その先を口にするにはあまりにもデリケートすぎて、言葉を呑んだ。
紫「いや、なんでもない。」
Aは何かを言いたそうにしていたが、ケントは無理矢理話題を変えた。
紫「ご両親は?」
『両親はいません。』
紫「すまん…」
まずい事を聞いたと謝ったケントにAは慌てて訂正を入れる。
『えっと、正確にはいるんです。生きてます。』
紫「そうなのか。」
『聞いた話では、養護施設の前に置き去りにされていたらしいです。まだ記憶のない頃の話で。』
話し始めた彼女の表情は決して明るいとは言えない。
『保険証とか一緒に置いてあったらしいので、すぐに両親の身元は分かったみたいなんですけど。一度も会った事ありません。』
紫「会いたくないのか?」
『特には。顔を覚えてたり、思い出があるなら、そう思うかもしれないけど…私には何もないですから。それに、私施設を2,3度変わったので。』
紫「どうしてそんなに?」
『小学4年生までは同じところにいたんです。でも…育ててくれた人が病気になって。それで。』
紫「他の施設に移された?」
『はい。その後はまあ…色々あって。』
紫「色々って?」
『施設を移ったのと同じくらいから、いじめが始まって。それで…』
紫「ご両親は会いに来てくれなかったのか?」
『一度も。施設の人から両親はとっくに離婚してるって聞きました。多分、もう新しい家庭があるんですよ。』
諦めたような顔で薄く笑ったA。
彼女の話はどれも重く、どうしてここまで不幸が降りかかるのかとケントは考えずにはいられなかった。
紫「じゃ、今の身元引受人の人は…」
『その人は高校に入る前までいた養護施設の代表で…』
紫「でもこの間連絡つかなかったぞ?」
先日、彼女が襲われかけた時、連絡をしたが一度も繋がらなかった電話。
ケントの言葉にギュッと膝の上の手を握りしめたA。
『当然です。だって…』
そう言って口を閉ざしてしまった。
紫「…?どうした?」
『だって…』
紫「だって?」
『今、刑務所入ってますから…』
紫「は?」
Aの言葉にケントの頭は真っ白になった。
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炭酸(プロフ) - 剣城萌江さん» ありがとうございます(^^)こんな駄作ですが…先生をより好きになるお手伝いが出来て私は幸せです! (2017年7月8日 10時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
剣城萌江(プロフ) - 最近リア友にアルスマグナを布教され、見事に沼にハマった新米メイトです。ケント先生推しなので最初からドキドキワクワクしました!これを読んでもっと先生のことが好きになりました(*´ω`*) (2017年7月6日 16時) (レス) id: 869f1bba53 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - あさべるさん» ただいまです!ありがとうございます(^^)読みに来てください!ゆっくりではありますが、書き始めてますので、気長にお待ち下さい(^_^;) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - アメさん» ご無沙汰してます。長らくお待たせしました(;´Д`)お気遣いありがとうございます(^^)アメさんもお気を付けて! (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - 韮さん» ただいまです!はい!のんびり楽しく頑張ります(^^) (2017年6月4日 23時) (レス) id: 35aaf36854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:炭酸 | 作成日時:2017年2月22日 0時