Story.39 ページ42
洞窟の見える崖の上から海燕さんの戦う姿を眺める事しか出来ないまま数分。
戦況は、海燕さんが押していた。
ギリギリの命のやりとりの中で“大丈夫”そんなことは言いきれるものではないが、ほとんど海燕さんの勝ちを確信していた...その時だった。
数秒、海燕さんと相手の虚の動きが止まった。
その僅かな間の示す違和感に気づいたのは私だけではなかったらしい。
「...海燕..殿?」
真っ青な顔でそうルキアが呟いた、直後。
ゆっくりとこちらを見た海燕さんは、目の部分がぽっかりと黒く空き、気色の悪い笑を浮かべていた。
「海燕殿...?」
「海燕さん...」
私たちが彼の名を呟くと、その顔に浮かべた気色悪い笑は一層深いものとなり、
「小娘どもが...どうしてそう何度も儂の名を呼ぶ。
そんなに儂が愛しいか、小娘。
ならば貴様から喰らうてやろう!」
そう言った彼の言葉を聞き、はっと目が覚めた。
「ルキア!コイツ海燕さんじゃない!!逃げろ!」
そう叫んだが、怖気付いて固まった足は言うことを聞かず、海燕さんの形をしたソイツはルキアの方へと一直線へ向かっていく。
もう数メートルでルキアとそいつが接触しそう...とその時、金属音が鳴り響いたと思えば隊長が海燕さんを止めていた。
「隊長!!」
「A!朽木を連れて逃げろ!!」
「でも隊長が!!」
「早くしろ!死にたいのか...!!」
「っ...、ルキア行くよ!!」
決して振り返らず、狭い林の中を抜けていく。けれど、浮竹隊長の命令を守っただけだ、ルキアを守るためだ、と自分に言い聞かせてみても心にかかった靄が晴れない。
...分かっているからだ。ただ怖いから逃げているのだと。
そんな時、
『また逃げんのか』
剣が私に問いかけた。
その言葉は遠回りに私に『逃げるな』そう言っていた。
『逃げてテメーに何が残る。このヘタレが。』
「...私は自分の命が大事なの。」
『違うだろうよ、俺が住んでんのはテメーの中だ。嘘吐こうなんざ百年早い。
怖いんだろ?テメーの手で海燕を殺すことが。
...テメーは何のためにここに来たんだ。
あんな虚に奴の身体、喰わせてどうすんだよ。』
的確に、私の心を刺す言葉。
『行けよ、弱虫。力なら貸してやる』
...その言葉の重みは私を方向転換させるには十分で。
「...ルキア。私、行ってくる」
「A...!?」
走っていた足を止め、踵を返し、海燕さんの待つ戦場へと引き返した。
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明里香(プロフ) - 35話、関わりんときじゃなくて、関わらんときです。 (7月25日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 34話、浮竹隊じゃなくて、十三番隊です。個人名で隊の名前を呼んだりしません。 (7月25日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 27話、予告道理じゃなくて、予告通りです。 (7月25日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 1話、頬ずえじゃなくて、頬杖です。 (7月25日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - 煉海さん» ...イヅルは...毒舌ですよ?(願望)イヅルに罵られてみたいなぁ... (2018年1月16日 20時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:近藤。 | 作成日時:2017年2月26日 11時