Story.38 ページ41
「水天逆巻け!捩花」
海燕さんがその聞きなれた解号を、斬られて血の吹き出している虚の触腕を掴みながら言った。
正直な話、相手の虚は動きは鈍いし攻撃は遅い。
警戒はしていたものの、海燕さんが斬魄刀を解放すればすぐに片付く相手であろうと思っていた。
しかし、やはりその考えは甘かった。
解号を口にした瞬間、海燕さんの斬魄刀が突然消滅したのだ。
「!?」
驚き目を見開いた時には既に遅し。
攻撃をくらった海燕さんが血まみれになっていた。
「海燕殿!!」
耐えきれなくなったルキアが剣の柄に手をかけたその時、剣を抜くのを制したのは浮竹隊長で。
「!隊長...!?お...お放しください!海燕殿...海燕殿を助けなければ!!」
そう言いながら取り乱すルキアに浮竹隊長はこう言った。
戦いには二つあり、それを常に見極めなければならない。
命を守るための戦いと、誇りを守るための戦い。
そして今、海燕さんは彼自身の誇りを守るために戦っているのだと。
誇りなんかより命の方が大事だ。
...以前の私ならばそう思っていただろう。
けれど、
日々を十三番隊で過ごすうちに私は海燕さんの笑顔から沢山のものを貰ってきた。
それは勇気であったり、元気であったり...私自身の笑顔であったり。
そんな彼の笑顔の源が都さんであることを私は知っていた。
日々海燕さんがする、のろけ話の中には彼の都さんへの愛が詰まっていた。
私だって都さんの事は大好きだったけれど、そんな私の
好きとは比べ物にならないほど海燕さんが都さんを愛していたことを、知っていた。
大切な人が殺される痛みも辛さも、よく知っていた。
本当は海燕さん自身だって泣け叫びたい、逃げ出したいと思っているはずなのに、大好きだった都さんの誇りを守るために、海燕さんは目の前で命を賭けて戦っているのだ。
彼に生きていてほしい、そう思うのに。
...助けに行こうと刀に手を掛けるのに。
...海燕さんの誇りを踏みにじることだけは、どうしても出来なかった。
圧倒的に不利な状況の海燕さんに手を貸さずして、それでも彼に生きていてほしいと心の中で祈るのは、身勝手で矛盾している単なる私のエゴだろうか。
どうすることも出来ない自分に無性に腹が立った。
...気を抜けば泣いてしまいそうだった。
無意識に強く噛み締めた唇が切れて口の中に血の味が広がった。
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明里香(プロフ) - 35話、関わりんときじゃなくて、関わらんときです。 (7月25日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 34話、浮竹隊じゃなくて、十三番隊です。個人名で隊の名前を呼んだりしません。 (7月25日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 27話、予告道理じゃなくて、予告通りです。 (7月25日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 1話、頬ずえじゃなくて、頬杖です。 (7月25日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - 煉海さん» ...イヅルは...毒舌ですよ?(願望)イヅルに罵られてみたいなぁ... (2018年1月16日 20時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:近藤。 | 作成日時:2017年2月26日 11時