Story.16 ページ17
自分を落ち着ける為に深く息を吐いた。
……って、深呼吸ぐらいで落ち着けるわけねーだろ。
「ちょっっと、迅。ねぇ。聞いてない」
「あれ?言わなかったっけ?」
「言わなかったっけ、じゃないわよ!なんで私はブラックトリガーとかネイバーとかデリケートな問題に知らず知らず加担させられてんのよ!!」
こめかみに青筋を立てながら、一応幹部の前であると掴みかかるのは我慢して、それでも引きつった笑顔のまま目では思い切り迅を睨みつける。
しかし、返ってきたのは悪びれる様子もないあっけらかんとした笑顔。
……確信犯である。
もう知らない、もう私は巻き込まれ済みだ。
……みなまで言うな、聞かなかった私が悪いとか、そういう正論は求めちゃいない。
ていうか、話さなかった迅が全面的に悪い。
今更城戸司令に言い訳したところで遅いし、忍田さんとか林藤支部長は私が加担するの先に知ってたみたいだし。
私を置き去りにして起こっていた出来事の数々をここにきてようやく理解して、私は再び深呼吸をした。
色々と、手遅れである。
私は迅が机へ置いた風刃を手に取る。
少しだけ、ずっしりとした重さが腕に伝わった。
「で?その玉狛の子のブラックトリガーは風刃よりも価値のあるものなの?
そもそも、その子から取り上げた所で使える人間がボーダーに存在するの?」
加担したものは仕方がないと、言い訳すら考えるのをやめて、ヤケクソで城戸司令に話しかける。
ここまで来たらもう仕方がない。
風刃は、私達の先輩にあたるボーダー隊員、最上宗一が遺したブラックトリガーだ。
私は直接面識があるわけではない。
しかし、通常、他のブラックトリガーの適応者なんて殆どいないものにも関わらず、風刃適応者はボーダー隊員の中に20人以上存在する。
その事実だけで、きっと人当たりのいい人だったのだということは、容易に想像がついた。
そして最上宗一は、迅の師匠にあたる人物であり、迅にとって風刃とは師匠の形見ということになる。
それを手放してまで護りたい後輩がいるのだ、ということにも少しだけ驚いて、乗りかかった船だし最後まで協力してやろうと思った次第だ。
まあ、私に大事なことを黙ってた事実は絶対許さないけれど。
「私も遠征帰りで疲れてんのよ、さっさと家に帰りたいの。
……玉狛のブラックトリガーか、風刃か。さっさと選んでくださいよ。城戸司令」
当然、城戸司令が選んだのは後者、風刃であった。
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近藤。(プロフ) - レモンとみかん人さん» 私の文章力不足で申し訳ないですが、打月はオリジナル武器です……。孤月とは区別していますので、ご理解お願いします。 (2021年12月13日 10時) (レス) @page4 id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
レモンとみかん人 - 打月じゃなくて、弧月ですよ (2021年12月11日 12時) (レス) @page6 id: 89af934301 (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ハイホーさん» コメントありがとうございます!結構クセのある夢主ですがいい子なので!行く末を見守って頂けますと嬉しいです! (2021年2月19日 18時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - 琉愛(るあ)さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、是非内容の方も読んで確かめて頂ければ幸いです! (2021年2月19日 18時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
ハイホー(プロフ) - 近藤さん、新作連載ありがとうございます!!近藤さんの原作沿い小説が大好きなので、本当に嬉しいです!今回の主人公ちゃんも最初からインパクト強くてもう好きです……。遠征メンバーや迅たち以外のキャラとの絡みがとても楽しみです!執筆活動頑張って下さい!! (2021年2月18日 6時) (レス) id: f4fc8fdd6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:近藤。 | 作成日時:2021年2月16日 12時