Story.6 ページ7
私はその場に膝から崩れ落ちるギンに駆け寄り、抱き抱えた。
けれど、見た感じでは傷はそこまで大きくない。少なくとも隊長格であればきっと命に別状はないだろう。
……その時は、そう思った。
「ギン、しっかり!……今治すから」
けれど、ギンの腹に開いた穴に治療用の鬼道を使うが、血は一向に止まらない。
ドクドクと流れ出てくる赤黒い液体が私の死覇装を濡らしていく。
……なんで、止まらないの。
自分の顔が真っ青になっているのが分かる。そんな私を嘲笑うように藍染は私に話しかけた。
「Aとギンに繋がりがあったとは知らなかったな。だがその男はもうすぐ死ぬ。崩玉の力を得た私の一撃がその辺の斬魄刀の一撃と同じだと思わない方がいい。」
「……ちょっと黙ってろよ!」
思わず声を荒らげたが、それでどうにかなるものではなかった。
……ここに卯ノ花隊長が居れば。私にもっと力があれば。
悔やんでも意味はない。
……このままじゃ、ギンは。
目に涙が溜まる、体が震える。
また、私は大切な人を護れない。そう思ったその時、
ピタッ……っと頬に手が当てられた。
それは、震える私の身体より更に冷たい大きな手。
「……アンタを護れんかった。乱菊の仇も取れへんかった。
折角手伝ってくれたのに、ごめんなA。」
「……なんでギンが謝んのよ。私が巻き込んで……私があの時死神になる手伝いなんてしなければこんなことには……!」
「……アンタの弟子になれて……Aと会えて幸せやった。」
「やめて……そんな……私は…………」
「……ボクはな、いつも顔色一つでボクのことを分かってくれて、お人好しで、優しいアンタが大好きや。
最後に……許してな。」
頬に添えられていた冷たい手が頭の後ろに回り引き寄せられ……私とギンの唇が重なった。
もう彼の唇にほとんど体温は残っていない。
そのまま……ほんの2、3秒その小さな間の後、ズルリと力なくギンの手が地面に滑り落ちる。
暫く呆然としていた私だったが、自分の涙が地面に染みを作っているのを見てようやく気がついた。
……私が泣いていることと、ギンが死んでしまったことに。
「なんで……ねえ、ギン。返事してよ……お願いだから。」
……どうして彼が最後に私にキスをしたのか。
分からなかった、分かりたくなかった。
聞かせてよ、その理由を。
けれどもう、その理由をギンに聞くことは叶わないのだと思うと余計に涙が溢れた。
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優雨-ゆうあめ-(プロフ) - うえぇ?!!千年血戦篇書いていただけるんですか…!!いや、いやもう、嬉しすぎる!!ありがとうございます!! (2022年10月30日 18時) (レス) @page15 id: 12d19b95d0 (このIDを非表示/違反報告)
いちご牛乳二世(プロフ) - 凄く…良かったです!SS等も気長に待っています! (2021年12月8日 21時) (レス) @page14 id: 7192c58253 (このIDを非表示/違反報告)
琴葵(プロフ) - 今頃になって出会ってしまった事が悔しくてなりません…完結本当におめでとうございます!!ぜひ転生後ストーリーも読みたい…!どうか、近藤。さんの気が向いて書きたいなと思える日が来たらと願っております。他作品の更新も応援してます!!大好きです!!! (2020年10月24日 10時) (レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅ(プロフ) - 夢主の生まれ変わった男版ストーリーもめちゃめちゃ読みたいと思ってしまいました。久々に読み返してみたら、やっぱり惹き込まれる作品で楽しい時間でした。m(*_ _)m (2020年8月2日 12時) (レス) id: 5e2c87c2fd (このIDを非表示/違反報告)
近藤。(プロフ) - ゆりさん» 本っ当に返信が遅くなってすみませんでした、読んで頂いてありがとうございます!私も宮本が大好きなので好きになっていただけたなら嬉しい!他作品の方も更新は遅いですが見ていただけるなら幸いです!! (2019年4月24日 23時) (レス) id: f8f1e234ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:近藤。 | 作成日時:2018年8月21日 10時