白紙願 ページ23
『調べたところ、被害者の女性は、先日病死していました。残念でありますが、天国で幸せになっていることを願うばかりです。』
「…まじか。」
土方は煎餅を口に運びながら、まさかの結末に驚いて呆気にとられていた。
あのとき憔悴していた被害者は確かに生きることが難しい状態だったものの、三年間ずっと入院していた訳では無いだろう。
「…報告書、補正だな。」
・・・
十二月十九日。曇天。
肌寒いばかりか、湿気が強く、俺の髪の毛をうねらせていた。
目の前の墓石には、『藤沢家之墓』と刻印されている。
そうだ、今日はAの葬式である。
天涯孤独だった彼女は、俺たち以外葬式に来るやつなどいなかった。
本当は、世間体なんて考えずにここで涙を流してしまいたかった。
永遠の別れが本当にやってくるなんて知らなかった。
Aが死ぬことは決まっていたのか。だとしたら遅かれ早かれこうなっていた。
残酷すぎる。
俺は白菊の花束を添えた。
彼女が生まれ変わった時、二度と三年前の事故のような災難に遭うことがないように。
俺はまたAと出会うことを願って、彼女の小さく白い小指に原っぱのシロツメクサの指輪をはめた。
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おちゃちゃ - 切なくていい話ですね。もう泣いちゃいました。 (2018年6月11日 23時) (レス) id: 687e689f52 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき(プロフ) - 空乙女さん» そう言っていただいて嬉しい限りです!まだまだ書き手としては新人なのですが、その言葉を貰うと自信が出ます(( 。ハイキューのやつも書いてたんでたまーに見てくださいね笑 (2018年3月5日 3時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
空乙女 - 切なくて悲しくてとても綺麗なお話ありがとうございました。表現法がとても綺麗で読み惚れました。ハイキューは私も好きです。これからも頑張ってください (2018年3月4日 22時) (レス) id: da52fc6dbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hikari | 作成日時:2018年1月10日 10時