『思ひわび』 ページ2
「…私に、男心を教えてください。」
朝日の差し込むこの家で、とんでもない依頼が出された。
「…なんで俺なんですか。別に男心がわかんねえなら恋人にでもなんでもいやぁいいじゃないですか。」
「…そんなの、おなごとして恥ずかしいです。」
「ほんとにあんたは男心をまるで分かっちゃいない。」
「だからこそあなたに…」
「男ってのは、隣に置く女の全ての初めてを与えたいし奪いたいもんなんだ。
だから気にしないこった。」
「…そうなんですか。」
するとAさんは、俺の目を見つめて意を決したように強い声でこう言った。
「坂田さんは、私を隣に置きたいですか?!」
「…はあ?」
「い、いや!変な意味ではなくて!ただ…あなたから見ても私はどう映るのかなあと。」
慌てて拒否しながら言い訳をする彼女は、俺が出したお茶を飲むと勝手に噎せていた。
「…さあね。俺はあんたに介抱してもらった身ですから、切り捨てるなんてこたァできないです。
そんなに自信がないなら、もっといい女になりゃあいいじゃないですか。」
「いい女?」
「Aさんは、肌が綺麗だし化粧でもなんでもすりゃあ、まあ旦那は綺麗な姿を見て喜ぶでしょ。」
「…なるほど。」
「別に化粧っ気がねえってわけじゃないんですけどね、あまりに素顔だと俺はいつも裸を見てる気分になるんです。俺の意見ですが。」
「化粧…」
「化粧は教えられませんからね?!」
「あとは、その着古したような着物とか…この前もおんなじの着てましたよね?」
「…あ…」
「貧乏じゃないでしょう?ならあと何着か買えばいい。それこそ恋人を連れ出してね。」
色々提案するが、どうもAさんはぽけーっと返事をするばかり。
手応えのないやりとりに齷齪していると、玄関でチャイムが鳴った。
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おちゃちゃ - 切なくていい話ですね。もう泣いちゃいました。 (2018年6月11日 23時) (レス) id: 687e689f52 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき(プロフ) - 空乙女さん» そう言っていただいて嬉しい限りです!まだまだ書き手としては新人なのですが、その言葉を貰うと自信が出ます(( 。ハイキューのやつも書いてたんでたまーに見てくださいね笑 (2018年3月5日 3時) (レス) id: c3febc506b (このIDを非表示/違反報告)
空乙女 - 切なくて悲しくてとても綺麗なお話ありがとうございました。表現法がとても綺麗で読み惚れました。ハイキューは私も好きです。これからも頑張ってください (2018年3月4日 22時) (レス) id: da52fc6dbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hikari | 作成日時:2018年1月10日 10時