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『あの、すみません』
Aのその柔らかくも透き通るような声に4人が振り返ると、Aのサラサラの髪がそよ風に吹かれてたなびきながらも4人に声を掛けた。
『この辺りに廃墟はありませんか?』
「えっと廃墟……ですか?」
『えぇ……“扉”を探してるんです』
4人はその言葉にヨコハマ市内にある建物を思い浮かべると、太宰がふと思い出した。
「確かこの先を真直ぐ行くと、数年前に潰れた学校があったよ」
『ありがとうございます……ダイジン、行こっか』
Aはそう言うと4人に頭を少し下げて、太宰が教えた通りその潰れた学校に向かって歩いて行った。
「何だったんだろう……」
「気になるンだったらついて行ってみれば良い話だろうが」
中也はそう言うと「行くぞ、芥川」と部下の芥川を連れてAの後について行った。
「敦くん、私達もついて行ってみよう」
「あ、はい!」
太宰と敦も、中也達の後を追うようにしてついて行くと、中也達はその廃学校の前で立ち止まっていた。
その前には錆びたバリケードで「立ち入り禁止」と書かれていたが、太宰はそのバリケードを無視して校舎の中に入っていった。
残りの3人も後を追うようにしてついて行くと、陽の光に照らされた他の学校には無い屋根が老朽化で無くなったドーム状の建物の中に着いた。
「凄い綺麗だ……」
敦のその言葉通りその建物の中には、陽の光に反射して透明な水が薄く溜まっていた。
芥川は一人、周りを警戒しながら周囲を見ているとドーム状の建物の真中にポツンと蔦が巻き付けられていた扉を見つけた。
「太宰さん、中也さん、人虎……あれは一体」
「あ?」
「おや……どうしてあんな所に扉が」
太宰は興味津々な様子で、その扉まで靴が濡れようと関係なく走っていった。
他の3人も同様にその扉の前に立つと、敦が代表して扉を開けることになった。
「じゃあ開けますよ?」
敦はそう言うとドアノブを捻り、扉を開けた。
扉を開けたその先は、満天の星空が嘘みたいな程の眩しさでギラギラと輝いていた。
4人は意を決してその扉の中へ入るが、入った途端元の場所に戻ってしまった。
その動作を何度もするうちに中也は、目の前にある不思議な形のした狐の石像を渾身の腕力で意図も簡単に抜いた。
「何だこの石像……偉く冷てぇな」
氷で覆われていたその石像は次の瞬間、まるで生命を宿したかのように毛で覆われて狐そのものの姿になり、中也の手から抜け出して水中を素早く駆け抜けて行った。
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虚無虚無ぷりん - すずめの戸締りも文ストも好きなので嬉しいです!応援してます! (2023年2月2日 11時) (レス) @page6 id: d13357cef5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - うわぁ、待ってください。好きです((応援してます! (2023年1月31日 17時) (レス) id: 9d95f1ffe8 (このIDを非表示/違反報告)
nemuruneko0315(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2023年1月30日 15時) (レス) @page2 id: bad30b3ef3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シフォンヌ | 作成日時:2023年1月30日 0時