薄桜鬼永訣録～新選組小話～《土方歳三》 (ページ6)

今日:14 hit、昨日:33 hit、合計:52,729 hit

四、人斬りの集団ページ6

・

「……風間様からですか？
　そう言えばあなたは
　風間家に身を寄せているのでしたね。
　…まぁ、大所帯だと言われていた初霜家も
　切り詰めているのは確かですな」

そういうと綱道はその場を離れる
初霜は静かにその後ろ姿を見ていた

＿＿＿
＿

「また壬生狼が斬り合いしよる」

翌朝
往来で壬生浪士組が
浪士と斬り合いになっていた

「ほんま怖いわ」
「なんやのあの集団は」

見物人が多いなか
どうやら壬生浪士組は
たった二人でそれを浪士が囲んでいるらしい

「……これはまた…」
「あんなん卑怯やないの…！」

咄嗟にAから擁護の声が出てきた

「やめり…！」

慌ててお雪がAを連れ出す

「何？何やのお雪ちゃん」
「京は長州に味方する人が多いやろ？
　あんな往来で壬生狼なんかに味方したら
　あかんて」
「してへんし！
　せやけどあれは卑怯やさかい！！！」

その言葉にお雪は少し目を細めた

「……男はんやったら
　きっとええお侍はんになれはったわ」
「なんやのお雪ちゃん…今日おかしいで」

その直後だった

「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ！！！」

突然
大声をあげながら刀を抜いた男が向かってくる

「…っ！」
「Aちゃん！」

お雪が手を引っ張り
Aを先にいかせようとした

だが彼女は足がすくんで動けない

「Aちゃん！！！！」
「ぐぁっ…！！！」

と、突然男が目の前で倒れる

「怪我はねぇか」

そこには壬生浪士組の一人が立っていた

「……」
「Aちゃん！」

駆け寄るお雪に対し
Aは男を見上げたままである
その男は目付きが鋭く
頭から足先まで全身に返り血を浴びていた

「……鬼や…」

その姿に思わず声が出てしまう

「？、何か言ったか」

男は眉を潜めた

「ああ土方君。間に合って良かったです」

その後ろからもう一人が現れた
物腰柔らかそうな彼は
Aをみるなり近寄ってくる

「すみません、驚かせてしまって。
　怪我はないですか？」

そういうとそっと手をさしのべて
彼女を立たせた

「……へぇ…」
「それは良かった。
　どうぞお気を付けてお帰りください」

にっこりと微笑むと身を翻して帰っていく

すると先に来ていた鬼のような男も
そのまま離れていった

「帰ろAちゃん」

お雪はAの手を握ると
そのままその場をあとにした

「……て」
「へ？」
「あんな…綺麗な顔して……
　人を斬らはるんやな…」
「……そやな……」

＿＿＿＿

＿