二、壬生の狼 ページ4
・___同年・六月
「なーんかなぁ…」
「どないしたん?」
甘味処で団子を食べていたAは
ポツリと呟く
「いや、あの壬生のお侍さんきてから、
皆怯えはって…空気悪いなぁて」
そう思わへん?と彼女は友人を見た
「そやな……。
特にあの芹沢とかいう人、
なんでもここに来る途中の宿に
火ぃつけたとか…」
「火ぃ!?」
「ついこの間なんて
力士と喧嘩したらしいし…
ほんま気を付けんと…」
友人はAをみて強く言い放つ
「目ぇつけられたらおわりや言うし、
関わらんのが一番や。
はよ出てってくれるとええんやけど、
無理やろな」
「出てってくれへんなら追い出すだけやし」
その言葉に友人は目を丸くする
「そんなん聞かれたらほんまに斬られるで」
「偉そにのさばっとるだけやないの!
お雪ちゃん、こんなんは強気でいくんや」
お雪、と呼ばれた彼女は
ふぅ、とため息をついた
「あんたには感心するわ」
お雪はAの一番の友人だった
透き通るような美人であり
加えて冷静で聡明
彼女はそんなお雪といるときが
いつも楽しかった
「ほなまた、明日」
「うん、今日はおおきにな」
日が傾き始めた頃、二人は笑顔で別れる
その直後だった
「Aちゃん!!」
突然、近所の人々が彼女を止めに来る
「今来たらあかん!」
「え…?」
「ええから行ったらあかん!」
戸惑うAの耳に入ったのは
とんでもない言葉だった
「あんたのところに…壬生狼が…っ」
「壬生狼!?」
一体何故自分のところに…
「女将さんが、
Aちゃんは近づけさせへんように
言ってきたんや」
「な、悪いこと言わんから…」
そう言っていたときだった
激しい物音が鳴り響き
自分の店から何人かが出てくる
「あかん…!壬生狼がくる!」
「隠れて!!!」
慌てて手を引く彼女たちに対し、
Aはその男達を凝視した
「どけどけ、邪魔だ」
彼らは自分を見ることもなく通りすぎていく
「あれが…壬生狼……」
こんな者達が京にいるのか__
彼女は心からそう思った
「てて様!かか様!」
彼らの姿が見えなくなった頃
Aはようやく店の前に迎えた
「っ!」
そこには血だらけの父親と
悔しそうに涙を流す母親が床に倒れていた
「女将さん!!!御亭主!!」
皆が駆けつけて手当てをするなか
Aはそれをただ静かに見つめ続ける
その内心は腸煮えくり返る思いだった
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作者ホームページ:http 作成日時:2020年4月16日 16時