薄桜鬼永訣録～新選組小話～《土方歳三》 (ページ28)

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二六、土方の小姓ページ28

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「例えですやろ？わかってますよって」
「そうだな、そうだ、」
「あ"っ！」

と、Aは自身の用事を思いだし
慌てて立ち上がった

「あかん！お遣いの途中やわ！
　かか様に怒られる」

そういうと土方に向き直った

「うちな、ここよう来ますのや」
「そうか」
「土方はんは？」
「俺もここにはよくくる」
「ほなまた会いまひょ。
　あんたはんの夢の話、江戸の話、
　聞きとおす」
「俺を避けてたんじゃねぇのか？」
「ここやったら誰も来ぃひんし、
　二人だけの秘密や！」

そういうとほなまた
とAは手を振っていく

「二人だけの秘密、か……」

土方はAの言葉を繰り返しながら
起き上がると
しみじみと川を見つめていた

＿＿その年の暮れ
Aは
土方が小姓を付けたという話を聞いた

＿＿文久四年

「何や女の子みたいな小姓らしいわ」
「えー！？そうやの」

年が明けても
土方の話は絶えずに
どこへいっても聞こえてきていた

「土方はんもえろうならはった
　いうことやな」

Aはそんな噂話を聞くたびに
土方のことを話していた

「そやなぁ」
「まぁ、うちには関係あらへんけど」
「……そやなぁ」

＿＿その年の五月末

新選組では沖田がつまらなそうにしていていた

「あれからあの子、全然見ないよね」
「煮売り屋の娘の事か？」
「うん、何回かお店にいったんだけど
　一回も見てないんだよね」

変だと思わない？
と沖田が訊ねると斎藤はあっさりと返した

「嫁いだのではないか？」
「あの子が？」
「それくらいの年だろう」

と、そこに小姓となったものが
お茶を持ってくる

「あ、千鶴ちゃん」

千鶴、と呼ばれた小姓は首をかしげた

「何の話をされてたのですか？」
「んー、ちょっとね」
「…？」

そんなやり取りを
土方もこっそりと聞いていたなど
その場にいた誰もが気がつかなかった

＿＿夕刻

「土方はん？」
「…」
「土方はん？」

名前を呼ばれていたことで
土方はようやく気がついた

「どないしましたん？」
「あ、や、悪い。少し考え事をしていた」

そんな土方にAは心配そうな顔を向ける

「新選組の副長言うんも大変なんやなぁ…」
「…まぁな」
「……うち、最近気ぃついたんやけど
　土方はんは悩み事があるとここに来はる」

言われた土方は驚いてAをみた

「違いますか？」

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