薄桜鬼永訣録～新選組小話～《土方歳三》 (ページ22)

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二〇、人は見かけによらないページ22

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どういうことだ、と沖田の方を向いた

「ごめんごめん。訂正するの忘れてた」
「変な噂でも流れたら困りますやろ！」
「そう怒らないで。
　お詫びにいいこと教えてあげるよ」

そういうと沖田は耳打ちする

「じゃあ、そういうことだから」

そうして手をひらひらとさせながら
沖田はその場を離れていった

「色々とすまなかったな」

男はAにそういうと
直ぐ様沖田のあとを追いかける

「何や春の風みたいな人達やったな…」

Aはそんな二人を見つめながら
ポツリと呟いた

“＿＿土方さん、お酒得意じゃないよ”

沖田が耳打ちした言葉が脳内に過る

「あの人……お酒…苦手なんや……」

くす、とAは笑った

「あないしてはるのに…おかし」

人は見かけによらない、
そんなことを思いながら
Aは漬物屋に向かった

＿＿＿＿
＿

「ごめんやす」

昼下がり、屯所の前で女人の声が聞こえてきた

「ったく」

どういうわけか
新選組屯所前にはよく女が立っている

それも一人や二人ではなく、多数だ

それぞれ想う人は違うようだが
彼女達は隊士が出入りするのを待っているようで
お目当ての者が出てくると
恋文やら差し入れやらを渡してくる

「はぁ」

土方は部屋の奥においてある駕をみて
ため息をついた
そこにはごっそりと文が入っている

全て女人からだ

＿土方もその一人だったのだ

　
「こうも渡されると困ったもんだな」

そもそも隊気が乱れる
そんなことを思いながら
土方は自室で書き物をしていた

「そやから土方はんに会わせとくれやす」

屯所前にいる女人は
どうやら自分が目当てのようだ

「勘弁してくれよ」

今はそれどころではない
そんなことを思っていた時だった

「あれ？Aちゃん。早かったね」

外から何やら親しげな声が聞こえてきた

「A？」

どこかで聞いたことがある＿＿

土方は思い出そうと脳内を駆け巡らせていた

「沖田はん！土方はんいたはりますか？」
「いるよ？」

と、突然自室の障子が開かれる

「総司…！お前勝手に…！」
「土方さん、出てあげてくださいよ。
　ずっと待たせるつもりですか？」

そういうとさっさと消えてしまった

「ったく……」

呆れたように立ち上がると門前に向かう
と、そこにはAがいた

「お前…」
「あ！やっと出てきた…！
　待ちくたびれるか思いました」

言うが早いか
つかつかと歩いてくると
土方に風呂敷を渡してくる

＿＿＿

＿