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十五、髪結い屋 ページ17




「そんなん他でしとくれやす!
 うちまで巻き込まんといて!」
「じゃあなんで手拭いもらったの?」
「あの人らが怪我しはった所に
 うちがたまたまいたんどす。
 隊の人を止血するために
 手拭いを貸して欲しい言わはってて
 誰も貸さんとただ見るだけやったさかい
 仕方無しに貸しましたん。
 けどあの時一枚しか持ってへんかったし
 破いて結びましたのや。
 返さんでええ、言いましたんに
 土方はん
 わざわざ二枚も持ってきはっただけです」


その言葉に沖田はふぅん、とだけ返す


「それよりうちに用ですか?」
「そうそう、
 ここの煮豆が美味しいって聞いたから
 食べたくて」
「そうですか。ほなどうぞ、お入りやす。
 東の方の口に合うか分からへんけど」
「……うわぁ、Aちゃんって
 あからさまなんだね…」


____
__


「副長」


その頃、新選組の屯所ではある事が起きていた


「斎藤か」

自室の前で聞こえた声に土方が障子を開ける
そこには
新選組三番組組長の斎藤一が立っていた


「どうした」
「屯所の前に髪結いの者が来ております。
 何でも芹沢さんにご用があるとのことで」
「芹沢さん…?」


不審に思った土方が出向くと
そこには黒髪に綺麗な顔立ちの女が立っていた


「あんたか、芹沢さんに用ってのは」
「へぇ」


女はそういうと深々と一礼し
そしてこう言った


「新選組副長の土方はん、どすな?」


土方はその言葉に眉を潜める


「芹沢はんの髪を
 “ツケ”で結うてたんどすけど
 そろそろ払うてもらわなうちとて
 困りまっさかい
 こうして訪ねさせてもろたんどす」


それが新選組と髪結い屋のお玉の出会いだった


___
__


「総司」


昼下がり
沖田が屯所に戻ると斎藤が呼び止める


「一君。どうしたの?」
「組長は皆集まるようにとのことだ」
「へぇ。何かあったの?」


そう言いながら部屋に入ると
既に各組長が揃っていた


「皆揃ったな」


近藤の隣には土方が座っている


「あれ?その人誰」
「総司、いいから座れ」


沖田が示す方向には一人の女がいた


「皆に紹介したい人がいる。
 彼女はお玉さんといい
 髪結いを生業にしている」


近藤は沖田が示した千葛を皆に紹介し始めた
お玉は深々と頭を下げると
今一度皆に向き直った


「彼女は髪結いをしているため
 多くの人と接触がある。
 よって今日から彼女も新選組の情報屋として
 動いてもらうこととなった」


___


_

十六、初霜の鬼→←十四、沖田の策略


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設定タグ:薄桜鬼 , 土方歳三 , 新選組   
作品ジャンル:恋愛
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作者ホームページ:http  作成日時:2020年4月16日 16時

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