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Story114 ページ40

航空便でやってきたそれを見た瞬間。


【私の世界へ。

 生きろ】


もう掠れていて読めないはずの文字が、なぜか読めた。


「…A」


その名前が、口をついてでた。


「…な、ぜ」


ふらりと、キッチンカウンターにもたれかかった。一気に、記憶が蘇ってくる。


入学式の日。誰もいない教室、三つの学習机と椅子。その一番窓側に腰をおろしルソーを読んでいたら、扉の開く音と人の気配、そして。


『………は?』


間抜けな声。第一声がそれか、と呆れた覚えがあった。


『初対面でいきなり人を見て固まるとは。失礼ですよ』
『あ、ああ…。わりぃ』
『いえ、扉を開けた瞬間硬直したので、特級呪霊でも見たのかと思いました』
『それは洒落にならねぇな…』


初めて交わした会話。隣にきた彼女を見て綺麗な人形だと思った。だが彼女はちゃんと『人間』で。

初めて訓練で傑に叩きのめされた時の悔しそうな顔。部屋の片付け手伝って、と悪びれもなく言いにきた時のジャージ姿。
笑って、怒って。

泣きながら、この手紙を書いて。


さようならも、ありがとうも、何も言えずに別れた、この世で唯一の。


「……っ、はっ」


呼吸を忘れていた。頭が痛くなり、床に座り込む。日本と同じ生活様式にしておいてよかったと、ぼんやり考えた。そうでなければ、今頃お気に入りのチノパンが汚れまくりだ。


「どう、して」


忘れていた?何かの呪術だろうか。確かに一緒に過ごした時間は数ヶ月だが、忘れるはずがないのに忘れていたのだから。震える手でスマホを取り出し、悟に繋いだ。



『ヤッホー七海。例のブツ、届いた?』
「五条さん、Aはどこですか」
『は?』
「Aですよ!貴方の妹はどこにいるんですか!?生死は!?」
『え、ちょっと待てよ、落ち着けって。オマエ何言ってんの?』
「ですからAは」
『だれ、それ』
「……は?」


凍りついたのかと錯覚するくらい、体から熱が引いていく。


「な、にを」
『僕に妹はいない。一人っ子だからね』
「いや、でも確かに彼女は、妾の子と言っていたから五条さんと母親は違うでしょうが」
『異母兄弟なんていないよ。…誰のこと言ってんの?七海』
「……バカ、な」


かちゃんと音を立てて、スマホが落ちる。


『おーい七海ー。大ジョーブー?』


(スピーカーから聞こえてくる声に)
(言葉を返す余裕すらない)
(あの人が)
(あんなに妹を溺愛していた彼が)
(Aを、知らないはず、ない)
(ない、のに)

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灯霧(プロフ) - 森さん» 応援ありがとうございます!また七海夢書くと思うので宜しくお願い致します! (2022年2月28日 0時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
- YouTubeのはきっと、千葉茉吏衣というアイコンの人だと思います。 これ面白かったです❗応援してます‼ (2022年2月25日 0時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
福寿茶寮(プロフ) - 灯霧さん» YouTubeでも似たようなコメントをみた事がありまして,もしかしてと思ったのですが,そうだったんですね…。 ありがとうございました。 (2021年12月22日 21時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 福寿茶寮さん» 申し訳ございません!私が気づいてなかったばっかりにご不快な思いをさせてしまいました。報告し非表示にしてあります。あの人はどこの七海夢にも出没するアラシみたいなものです。今後も見つけ次第非表示にいたします。お手数をおかけいたしました…! (2021年12月22日 15時) (レス) id: 659f7a97b9 (このIDを非表示/違反報告)
福寿茶寮(プロフ) - マリイ(七海建人の嫁)さん» 変な事書くのやめて下さい。 (2021年12月22日 11時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灯霧 | 作成日時:2021年8月3日 16時

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