Story102 ページ20
(しまった)
気が緩みすぎただろうか。うっかり漏れた言葉で、七海に違和感を与えてしまった。険しくなった表情に、笑みを浮かべ直す。
「楽しくねぇってわけじゃねーんだけどさ。ほら、夏油さんって女受けいいだろ?出掛けてるとそういうオネーサマたちの視線がうざくてさ」
「今更そんなことを気にするような性格じゃ無いだろう」
「ひどいわー。傷つくー」
ケラケラ笑って長そうとすれば、グッと肩を掴まれた。隣にしゃがみ込んできた七海に、顔をしっかりと覗き込まれる。
「誤魔化すな。見え見えだ」
「誤魔化してねーっての。実際、楽しくねぇわけじゃねーし」
「なら何故、心から笑えない?」
「そんなの色々あるだろ。お前に話す必要、ねぇじゃん」
熱くなるなよ、そう言って彼の手首をとれば、太い指に力がこもった。離すまいとするように。
「必要がなくとも、頼ってほしいと思うのは間違っているか?」
「…は?」
「前々から思っていたが、最近…少なくとも星槳体の任務の時から、Aらしくない言動が多い。それに気づかないほど、私や灰原が鈍感だと思っていたのか?」
「…そんなこと」
「あるだろう。京都に来る前、私たちに怒っていた件だってそうだ。あんなふうに殴る必要もなかったし、執拗にわたしたちと距離を取る必要もなかっただろう。…今のAには、余裕が無い」
質問ではなく、断定の言葉。それにAは息を飲んだ。
(侮っていた)
正直、彼らが気づくことはないと思っていた。自分が何をしようと、それが必要ならば彼らは指示に従ってくれると信じていたし、ならば下手に情報を与えて誤解や独断を招かれるより、すべて自分の手でコントロールしたかったから、何も言っていなかった。…それが、Aの余裕を奪っているなんて、自覚すらなかったのに。
「何を隠している?それは私たちには話すことすらできないのか?」
「…そう、だな。話せねぇな」
「ならば、我々にできることは何か無いのか?…このままでは、お前がいずれ死ぬぞ」
「はは、そんなに追い詰められてるように見えたか?」
「ああ、見える。勘違いするな。過去形ではなく、現在進行形だ」
「……そりゃ、参ったな」
(ふわりと)
(白髪が目前を舞う)
(しゃがみ込んだ肩口に彼女の頭が乗って)
(少しこのままでいて、そんな事を言われて)
(私は不覚にも)
(身動きひとつ取れなくなった)
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灯霧(プロフ) - 森さん» 応援ありがとうございます!また七海夢書くと思うので宜しくお願い致します! (2022年2月28日 0時) (レス) id: 58548306cb (このIDを非表示/違反報告)
森 - YouTubeのはきっと、千葉茉吏衣というアイコンの人だと思います。 これ面白かったです❗応援してます‼ (2022年2月25日 0時) (レス) id: d826e852a9 (このIDを非表示/違反報告)
福寿茶寮(プロフ) - 灯霧さん» YouTubeでも似たようなコメントをみた事がありまして,もしかしてと思ったのですが,そうだったんですね…。 ありがとうございました。 (2021年12月22日 21時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 福寿茶寮さん» 申し訳ございません!私が気づいてなかったばっかりにご不快な思いをさせてしまいました。報告し非表示にしてあります。あの人はどこの七海夢にも出没するアラシみたいなものです。今後も見つけ次第非表示にいたします。お手数をおかけいたしました…! (2021年12月22日 15時) (レス) id: 659f7a97b9 (このIDを非表示/違反報告)
福寿茶寮(プロフ) - マリイ(七海建人の嫁)さん» 変な事書くのやめて下さい。 (2021年12月22日 11時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯霧 | 作成日時:2021年8月3日 16時