【七海建人】きっと君を救うから。Part3【呪術廻戦】

Story83 ページ1

デートをしよう。付き合うことになった記念に。

そう道場で言われた週末、Aは私服に身を包んで池袋にいた。寮から一緒に行ってもよかったのだが、どうしても午前中は任務が入ってしまったのだ。ちょっぱやで任務を終わらせ、補助監督にこの駅まで送ってもらって着替えた。制服は私服を入れてきた紙袋に入れてぶらぶらと持っている。ふくろうの像の前で待っていると、やがて高い背の前髪がひょこひょこ揺れる傑の姿が見えた。思わず笑う。


(兄さんほどじゃないんだけど、傑パイセンもずいぶん目立つんだよな)


普段着ている制服がボンタンなせいでどうしてもヤンキーなイメージが崩れないが、今日の彼は長袖のＶネックカットソーに細身のジーンズと上着というシンプルな服装だ。まぁそれすら、しゃれっ気のあるもので着こなしてるあたり、夏油傑はやはりクズ…げっほんもといイケメンなのだが。


(道行くお姉さまがたの視線が熱くなりそーだな)


それに引き換え、Aは私服をあまり持っていないしおしゃれにも興味がないため、だぼっとした大き目の長袖シャツ(締め付けがなくて楽だから)とこれまただぼっとしたジーンズ(これも締め付けがなくて楽なため)である。色も白と黒。飾り気も何もない。


「待たせてしまってごめんね、A」
「いや、別に待ってないんで」
「…敬語」
「…待ってないから。平気」


つい癖でいつものように敬語を使おうとしたらすごく悲しい顔をされた。まるでしょぼんとした大型犬だ。まったくと苦笑してため口になおす。


「それにしても人が多いね」
「週末の池袋だからね。仕方ないっしょ。とりあえず飯食わない？私、腹減った」
「ＯＫ、何が食べたい？」
「肉！」
「はは、まるで灰原に聞いたみたいな気分になったよ。…じゃぁ焼肉？」
「んー…それもいいけど、その後があるでしょ？傑パイセン…傑さんに任せるよ」
「わかった。じゃぁ…ケ〇タにでも行こうか」
「……行ったことない」
「このセレブめ」


一般家庭出身の傑と御三家の五条家生まれのAでは、こういうところが異なる。それを前の人生でも楽しんだものだが、今回も彼は面白そうに笑った。


「それじゃぁ、ジャンクフード巡りでもしようか」
「それも面白そう！行く！」
「じゃ、行こう」


ふっと笑った彼に、手を出された。その手を取ると、指と指を絡めて恋人つなぎをされる。


(歩き出した歩幅が私に合わせていて)
(やっぱり根っこは優しい人だと思った)

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