9.合宿 ページ9
そんなこんなで、お盆が明けて、男バレの合宿が始まった。
それはバスケ部の一週間に渡る一日練が始まったことも意味していた。
男バレが焼肉したり動物園に行っていたのも、お盆休みと午前練という数少ないオフが重なっただけだ。
よく考えたらあの人たちは年間360日ほど練習している気がする。
それだけ練習しても東京一位通過できないと嘆いていたのも知っている。
バレーは好きだけど、毎日部活楽しいって思いながらしているわけではないのも知った。
木兎と出会って、足掻くことや頑張ることが恥ずかしくなくなった。逆に努力しない自分が恥ずかしくなった。
雪絵ちゃんと出会って、ベンチから見ることしかできない辛さも知った。試合中キツくなって交代したいだなんて思わなくなった。
木葉と出会って、器用貧乏、だなんて言われているけど、彼にもコンプレックスがあることを知った。部内に勝てないと思う相手がいても木葉と鼓舞し合った。
そして、赤葦に出会った。五本指の木兎にトスを上げるまでの彼の努力は凄まじかった。
彼は言った、自分は平凡だと。けれど、木兎が引退するまで彼のセッターは自分でありたいと。
どんなに練習で疲れても木兎の自主練に付き合って。そのトスは絶対に疎かにしない。
赤葦から一本一本を無駄にしないことを学んだ。
梟谷の男子バレー部と関わることで、捻じ曲がった私の感情を定期的に叩き直すことができた。
私がこんなキツい練習やめたいだとか、今日は部活行きたくないだとか、この人には勝てないって劣等感だとか、そんな弱い自分と決別できた。
いつだって彼らは私の前を歩いていた。いや、走っていた。立ち止まりそうな時は手を取り合って、頂上を目指していた。
私は違う部活で、その輪には入れないけれど、その後ろ姿に、自分も立ち止まっていられないと思った。
一歩でも半歩でもいい。上手くなりたい。その一心で頑張れる。どんなにチームメイトから認められなくても。部活への熱量が自分だけ違っても。
今日からの一週間に私は闘志を燃やしている。彼らはレベルアップして帰ってくるだろう。
私も負けていられないのだ。
副主将という肩書に見合うだけの、いや、それ以上の実力をつけなければ。あんなセリフ、もうチームメイトに吐かせないくらいの。
よし!下で拳を握る。
私を後押しするかのように、太陽は私の背をガラガラと照らしていた。
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作者名:...syokatsu... | 作成日時:2022年9月23日 3時