scene255 ページ5
「……力がない？」
『そう、力が完全になくなったから、ヒロトはAにあげたんだよ。そうじゃなかったら、簡単に人に渡したりしないって』
『ヒロト』というのは、自分のことじゃないとわかっていても、妙な気分になる。
力がなくなったっていうのは、どういうことなんだろう。少なくとも、今Aが持っているエイリア石には、力が宿っていると考えていいと思うんだけど。
『しかも、わざわざネックレスに作り変えてあげたんだよ。まあ……エイリア学園の一件で、いろいろ迷惑かけたからってことなんだろうけど。あの二人って、なんか怪しいんだよな』
また知らない単語が出てくる。なんだよ、エイリア学園って。厨二病みたいなネーミングしやがって。
気になるところはいろいろあるけど、今は全部後回しだ。
「よくわかんねえけど……、そっから下に投げてくれ」
『え、投げるのか？』
「いいから早くしろよ」
『それが人にものを頼む態度かよ……。まあ、いいけどさ』
いいのかよ。
『じゃあ、いくぞ』
おれはじっと暗闇に目を凝らす。
それはちょうど手元に落ちてきた。だれもいないはずの給水塔から、小さな石が降って来る。
おれは手の中で感触を確かめる。Aが持っているものより、一回りくらい大きい。歪な形の、ごつごつした石。
ここが、もう一つの世界と繋がる場所だ。
エイリア石が、二つの世界を繋げる力になる。
『あれ？ え、な……なんか、投げたらどっか行っちゃったんだけど』
「じゃあ、これは貰ってくからな」
『は、え、……どういうこと？』
「うるせえ、お前と話してる暇はねえんだよ」
我ながらひどい対応だと思う。でも、その時のおれは、あまりにも切羽詰まっていたんだ。
「一応、礼は言っとく。じゃあな」
『ちょっ……ちょっと待って！』
電話を切ろうとすると、そいつは声を荒げた。
「なんだよ、おれは今忙しいんだ」
『あのさ、変なこと言うかもしれないんだけど……』
強制的に切ってしまおうかと思ったけど、少し言葉を待つ。
『おれ、どこかでAは生きてるんじゃないかって思うんだ』
どきりとした。そいつの言ったことが当たってたからっていうのもあるけど、どうやってその思考に辿り着いたんだ。
『どこかで、今も元気に……、おれがそう思いたいだけかもしれないけど。でもおれ、見ちゃったんだよ』
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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…！ (2021年7月5日 16時) (
レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます！丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました！個人的には甘くない終わりにくそぅ！と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください！応援しております！ (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました！大好きな作品です！完結おめでとうございました！ (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした！！！！大好きです！ヾ(＠⌒ー⌒＠)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年8月22日 20時
