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scene285 ページ35

「ああ、君たち、イナズマジャパンの……どうしてこんなところに?」


おれはその声を聞いたことがあった。特徴的な声だ、間違えるはずもない。


「お前……」

「ヒロトくん」


言いかけて、野坂に制止される。

そんなおれたちを、そいつは訝し気に見つめる。


「部室になにか用が――」

「この間はどうも、ありがとうございました」

「……え?」


野坂の唐突な言葉に、おれもそいつも目を丸くする。


「すみません、ぼくたち、もう用は済んだので。失礼します」

「え……ちょ、ちょっと」

「行くよ、ヒロトくん」


歩き出す野坂におれは一瞬ためらって、だけど困惑したそいつと、しっかり目を合わせる。


「あ……ありがとな」


それだけ伝えると、先を行く野坂の元に駆けていった。


校舎の角を曲がる前に振り返ると、そいつが部室に入っていくのが見えた。

前に向き直ると、野坂がこっちを見て微笑む。


「帰ろうか、ヒロトくん」





次の日、おれは一旦家に帰り、それからAのいるビルへと向かった。

『着いた』と一言メッセージを送ると、Aが入り口を開けてくれた。


「ヒロト……どうしたの?」


鍵を閉めたことをしっかり確認してから、Aは振り返る。


「お前に話があるんだ」


ここじゃなんだから、話の前に応接室に移動する。

ドアを開けると、テーブルの上に散乱した紙とノートPCが目に入る。


「ツアーの……いろいろ覚えることあるから。できるかわからないけど、一応」


散らばった紙をまとめながら、Aは照れたように笑う。


「そのことなんだけど」


おれが切り出すと、Aの手が止まった。

まん丸な目がおれに向けられる。おれは髪を掻き混ぜて、なんと言おうか迷っていた。


「お前……アイドル続ける気なのか?」


Aは紙の束をテーブルに置く。


「わからない……」


手元の紙に視線を落とし、消え入りそうな声で言う。

紙にはAの書き込みがたくさんあった。こんな状況だけど、ちゃんとやるべきことをやっているんだな。


「でも、もう無理だと思う。私も――」

「お前はアイドルを続けろ」


Aの動きが一瞬止まった。ゆっくりと顔を上げて、まっすぐにおれの目を見る。


「うちがスポンサーになってやるよ」


Aの目が見開かれる。やがて、すくめられていた肩から力が抜ける。


「そんなの……」

「さっき親父に会って頼んできた」

「え、さ……さっき?」

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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…! (2021年7月5日 16時) (レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます!丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました!個人的には甘くない終わりにくそぅ!と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください!応援しております! (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました!大好きな作品です!完結おめでとうございました! (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした!!!!大好きです!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2019年8月22日 20時

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