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scene253 ページ3

『もしかして、なんかあったのか?』

「な、なんかってなんだよ」

『わからないけど……声がそんな感じだから』


どこでもいいから、しらみ潰しにあたってみた方がいいのだろうか。それとも、確かな情報を掴んでからの方がいいのか。


「なあ、お前……エイリア石って知ってるか」


とにかくなんでもいいから情報が欲しい。そう思って、おれはその言葉を口にした。


『もちろん知ってるよ。あんまり思い出したくないけどな……』

「まっ……マジかよ!」


エイリア石はAが向こうの世界から持ってきたものだし、なにか知っているんじゃないかと思ったけど、ビンゴだ。

やっぱり、もう一つの世界では、エイリア石はもっと一般的なものなのかもしれない。


『そういえば、Aはずっと大事に持ってたな』


そいつは少し寂しそうに言った。


「それってどうやって手に入れるんだよ」

『Aは友達からもらったらしいんだ。お守りなんだって言ってたな』

「その、もらった相手ってだれかわかるか?」


次に相手が放った言葉に、おれは衝撃を受ける。


『基山ヒロトってやつだよ。イナズマジャパンのメンバーだったし、お前も知ってるんじゃないか?』


聞き間違いかと思った。でも、そいつは確かにそう言ったんだ。


「基山……ヒロト……?」


口にしてみても、なんだか現実味を帯びない。


『知らない? サッカーとか、あんま見ないか』

「いや……」


聞きたいことがたくさんあった。でも、口にするのが怖くて、飲み込んだ言葉が喉の奥を圧迫する。


イナズマジャパンの基山ヒロト。吉良ヒロトは死んでるんだろ? じゃあ、基山ってなんだ。ヒロトってなんだ。それは、おれの知ってる基山なのか。それとも、まったく関係ない人物なのか。


おれの中に、幼いころの記憶が蘇る。

父さんが本当の子どものようにかわいがっていた、タツヤの姿。

おれが死んで、その後、まさかタツヤが――


『おーい、聞こえてるかー』


その声がおれを引き戻す。


「ああ……悪い」


ポケットのスマホが震える。着信を見ると、野坂だった。

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ペナ紅 - やっぱ電話の相手、半田だったんだ…! (2021年7月5日 16時) (レス) id: 173b2b90f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのわたし(プロフ) - 完結おめでとうございます。高い文章力ですごく引き込まれました。私事ではありますがわたしは基山ヒロトが好きで吉良ヒロトがどうしても好きになれずこの小説を取っ掛りとして読ませていただきました。あなたの作品で彼のことを好きになれました。 (2020年12月8日 18時) (レス) id: 0a912f5e29 (このIDを非表示/違反報告)
りと - 完結おめでとうございます!丁寧かつ読みやすく想像しやすい文章でサクサク楽しく拝見できました!個人的には甘くない終わりにくそぅ!と思いつつでも現実だったらそうだよなぁとしみじみ受け止めました。笑 また是非に文字を書き続けてください!応援しております! (2020年11月22日 15時) (レス) id: 4c41bf9741 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - とっても楽しく読めました!大好きな作品です!完結おめでとうございました! (2020年3月17日 10時) (レス) id: 40379c818e (このIDを非表示/違反報告)
鬼跡 - 完結おめでとうございます⊂((・x・))⊃この作品本当に大好きでした!!!!大好きです!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ (2019年12月18日 18時) (レス) id: 8e87660fcc (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2019年8月22日 20時

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