scene90 ページ40
それぞれが野坂の話を自分の中に落とし込むために、しばらく黙って言葉を反芻していた。
眉間にしわを寄せて懸命に頭の中を整理するおれを、野坂はじっと見つめていた。
「なんだよ」
「いや……」
野坂は視線をそらして、今度は床を見つめる。
なんなんだよ……、歯切れ悪いな。
・
「と……とりあえず、一応は野坂の話が全部真実だったとしよう」
風丸さんが苦い顔で言った。
「それが、Aが飛び降りた理由とどう関係するんだ?」
「確かに……全然繋がらないですよね」
別の世界に暮らしていたのを、急に知らない世界に飛ばされるなんてこと、本当にあるとしたら、相当戸惑っただろうし、だれにも相談できないという状況は、かなりきついと思う。
でも、Aは普通にこっちでの生活に適応していたじゃないか。たまにおかしなところはあったけど、だれにも勘付かれずに。
「こっちでの生活に耐えられなくなった……っていうわけでもなさそうだよね」
吹雪さんが言った。おれも同感だった。
「そうなんですよね……これだけだと、飛び降りた理由には繋がらないんです」
野坂も考え込んでいるようだった。
「アイドルやるのに疲れちゃったとかは? 向こうではアイドルじゃなかったんだよね」
「そうですね……その可能性も考えたんですが……」
おれはふと、Aと最後に言葉を交わした、バルコニーでの出来事を思い返した。
自分はアイドルなんてやっていていいのか、あいつは確かそんなことを言っていた。
アイドルとして多忙な生活を送り、休みもほとんどなかったんだ、それが辛くて耐えられなくなってしまったというのは、考えられなくもない。
でも……やっぱりなにかひっかかる。
すると、野坂がぼそっと口にした。
「Aちゃんは、いつから決めていたんだろう」
そう言った野坂の表情に、なんだか寒気がした。
野坂は自分の膝のあたりに視線を落として、じっと思考を続ける。
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楓 - 福岡、京都、沖縄...陽花戸中、漫遊寺中、大海原中ですね。立向居や木暮、綱海がいるか確かめにでも行ったのでしょうか...。でも、夢主ちゃんの世界にヒロトは存在していない、と聞いたとき、ヒロト本人はどう思うのでしょうか...続きがすごく気になります! (2019年2月17日 17時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 無印時代からアレス時代に来るとき、雷門中から飛び降りたことで夢主ちゃんがこの時代に来れたとか...?色々想像できて楽しいです!頑張ってください! (2019年2月15日 13時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 初コメ失礼します!!もしかして夢主ちゃんは無印時代から来た子ですか!?アツヤ見て泣いたのも、ヒロトを見てビックリしたのもつじつまが合いますし...。(アツヤが生きてて嬉し涙、ヒロトがタツヤと全然似てなくて驚き)いつも応援しています!! (2019年2月12日 3時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - すごく場面場面が入ってきてとっても読みやすいです!続き楽しみにしています♪ (2019年2月11日 22時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
はずにゃん☆ - こんな感じの小説待ってましたー♪投稿頑張て下さい。 楽しみにしています! (2019年2月9日 14時) (レス) id: f86bddf786 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2019年2月8日 17時