scene66 ページ16
一瞬なにを言われたかわからなかった。
一体どうやって切り出そうかと、ずっと頭の中でぐるぐる考えていたから、唐突すぎるその言葉は、すぐに泡みたいにはじけてしまって、なんだか現実味がなかった。
「お、お前……今なんて……」
「でもね、私は野坂くんの彼女だから」
そう言ってAはつけていたネックレスを外し、おれの手に握らせる。
「代わりにこれ、ヒロトにあげる」
一瞬プレゼントを押し返されたのかと思ったが、違った。
恐る恐る手を開くと、紫色の石のペンダントが握られていた。石は切り出したままみたいな不格好な形だった。
おれがぽかんとして紫色の光を見つめていると、Aが言った。
「それね、私の大事なものなの。お守りなんだ」
Aの声はなぜか寂しそうだった。
「大事だから、持っててほしいの……ヒロトに」
そう言ってAは戸惑うおれを置いて、また歩き出した。
「あ……ちょっと待てよ！ おれはまだなにも……」
おれの声にも振り返らず、Aはどんどん先を行く。
Aはなんて言った、おれを好きだと言ったのか？ でも野坂の彼女だからって、それで、これを持っていてほしいって。どういうことだ、まったくわからない。
ぐちゃぐちゃな頭のまま、おれはAの後を追う。
「A、待てって、聞けよ」
ぐっと肩を掴むとAがこちらを振り返る。おれはその目を見て、何も言えなくなってしまった。
「だめだよ……ヒロト、今はまだ」
その目は笑っているようにも、泣いているようにも見えた。
「もう少しだけ待ってほしいの、私がちゃんと全部話せるようになるまで。そうじゃないと……、隠したままじゃヒロトの気持ち、素直に受け止められないから」
Aの肩は震えていた。
叩けば崩れてしまいそうな、小さな肩だ。
おれはその肩を引き寄せてAを強く抱きしめた。
「……わかった、お前が話すの待っててやるよ。だから、その時は……」
自分の気持ちを聞いてほしい。
その言葉は、温かいAの体温に溶けていった。
本当は今すぐ聞いてほしかった。でも、Aは意地でも聞いてくれないだろうし、言えないものは言えない、Aはそういうやつだ。意外と頑固なんだ。
おれにできることは待つことだけ。それも優しさなんだって、今になってようやくわかった気がする。
重なり合う鼓動を感じながら、そんなことを考えていた。
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楓 - 福岡、京都、沖縄...陽花戸中、漫遊寺中、大海原中ですね。立向居や木暮、綱海がいるか確かめにでも行ったのでしょうか...。でも、夢主ちゃんの世界にヒロトは存在していない、と聞いたとき、ヒロト本人はどう思うのでしょうか...続きがすごく気になります！ (2019年2月17日 17時) (
レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 無印時代からアレス時代に来るとき、雷門中から飛び降りたことで夢主ちゃんがこの時代に来れたとか...？色々想像できて楽しいです！頑張ってください！ (2019年2月15日 13時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 初コメ失礼します！！もしかして夢主ちゃんは無印時代から来た子ですか！？アツヤ見て泣いたのも、ヒロトを見てビックリしたのもつじつまが合いますし...。(アツヤが生きてて嬉し涙、ヒロトがタツヤと全然似てなくて驚き)いつも応援しています！！ (2019年2月12日 3時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - すごく場面場面が入ってきてとっても読みやすいです！続き楽しみにしています♪ (2019年2月11日 22時) (レス) id: 35021d0064 (このIDを非表示/違反報告)
はずにゃん☆ - こんな感じの小説待ってましたー♪投稿頑張て下さい。 楽しみにしています！ (2019年2月9日 14時) (レス) id: f86bddf786 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2019年2月8日 17時
