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中原 ページ29

「俺はポートマフィア幹部の一人、中原中也だ。もしポートマフィアに乗り換えるのなら今の内だからな」

Aの頬を撫でる中原。口元は笑みこそ浮かべているが、その瞳は一つでも望んでいる答えを取り逃がそうものなら今すぐにでも始末するとでも言いたそうにやたらとぎらつかせていた。
最近のAは危険思考の者に愛されやすいようだ。類は友を呼ぶと言うがまさにこの状態なのだろう。

「私はウォルター・A。ただの画家なのだよ」
「嘘吐け!」

中原はまた笑った。この男はよく笑うなとその姿を冷ややかに見つめながら思う。まるで太宰のようだ。嗚呼、けれど、どちらかと言えば中原の笑い方のほうが気持ちが良い。どうしてそう思うのかと問われようものなら、誠心誠意答えたいのだがどうせ月並みの言葉しか出てこないのだろう。我ながら乏しい語彙力に涙すら出そうになった。

「本職はヨコハマのジャック・ザ・リッパーだろ。あんま冗談を言ってると狼少年になるぞ」
「もう少年という歳では無いのだがね」

いつまでも頬から手を離さない中原に居た堪れなさを覚えて、その手を引っぺがす。中原は小さく舌打ちをしたが、それでも笑みを浮かべていた。

「それに、本職は武装探偵社の社員だ。そこを間違えられては困るのだよ、おちびさん」
「君は私の上司の相棒とよく似ているが正反対にも見えるね。まったく、太宰くんと比べられてしまうだなんて…。さあ、私を仕事へ向かわせてくれ給え。もう面談は良いだろう?」

ぶちりと中原の何かの切れる音がした。何か仕掛けて来る気なのだろう。腕を振り上げ、降ろすその一瞬、中原のジャケットの中が鈍く輝いたのをAは見逃さなかった。

「きみ、刃物を持っているのかい?貸し給えよ」

獲物を見つけた猛禽類の様にAの目は見開かれ、鈍い光へと手を伸ばし、掴んだ。懐かしい、けれど恐ろしくもあるこの感覚で全てがまた蘇る。血だ、これは体内に触れた記憶だ。不思議と笑みが零れてしまった。

浮いていた体を回転させ、腰を捻って中原を思い切り蹴り上げる。思っていた以上に中原は重力に逆らって空中へ浮いた。丁度その時にAが感じていた浮遊感が消え、落下。否、落下するよりも先に柵へとしがみつき、先程まで中原の居た場所へ降り立った。

「君も異能力者、というやつなのかい?残念だけど私には無縁の能力でね、手加減は必要なくて?」

切れた唇から滴る赤を雑に拭いながら、中原はAを睨んだ。

磁力→←困惑



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左目から鯖味噌(プロフ) - 書けるように頑張りますね。感想ありがとうございました。 (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 21さん» 有難う御座います。言葉が気持ち悪くないか何度も自問自答していたのですがそう言って頂けて嬉しいです。更にはご本人の方にも興味を持って頂きとても喜んでおります。お金を払いたい位だなんて恐れ多い言葉以外の何ものでもありません。楽しみにして頂けるような作品が (2017年12月27日 11時) (レス) id: e982473bb6 (このIDを非表示/違反報告)
左目から鯖味噌(プロフ) - 七葉さん» コメントありがとうございます。大抵今後の展開を考えない行き当たりばったりの不安定更新ではありますが七葉さんの温かいお言葉のお陰でまだまだ頑張れそうです。これからもっともっと楽しめるお話にしていく事が出来たら幸いです。コメントありがとうございました。 (2017年12月6日 21時) (レス) id: 7e4ff29a97 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - とても続きが気になります!これからどうなっていくかが楽しみですね!更新頑張ってください!応援してます! (2017年12月6日 20時) (レス) id: 88ee75b376 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:左目から鯖味噌 | 作成日時:2017年11月3日 14時

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