子供48 ページ48
蒼くんを無事に家に送った後。
私と総悟くんは、屯所へ戻るため雪道を歩きだしていた。
「彼は強い子です」
「ま、そうですねィ。本当は自分だけの父親として戻ってきて欲しいはずなのに、赤ん坊の声聞いた瞬間、一丁前に強く我慢してやしたよあのガキ」
強く握り返された手は、熱く震えていた。
ぐっと歯を食いしばり耐えた姿は、蒼くんの年齢と比例しない強い意志を感じた。
蒼くんは、こうしてさらに大人になっていくのだろう。
まだ知らなくていい「痛み」を、蒼くんは経験した。
そしてそれは、これからも続くことだろう。
どの子よりも多く、そして長く耐えなければならなくなる。
だから余計蒼くんは、多くの物事に対して我慢を覚えていくのだろう。
…誰かに似てると思ったら、そうか。
蒼くんは、昔の銀ちゃんにソックリだ。
小さい頃の銀ちゃんに。
それに、あの人にも。
殻を破らず、破らさせず。
己の意志を貫く彼に。
思えば、いつもあの人は何かを我慢していた気がする。
もちろん、それは小さい頃の話だ。
今は「我慢」や「自制心」を忘れてしまっている。
「高杉兄さん…」
口から零れた名前は、少し空いた心の窓の外へ風と共に流れた。
もう会うことはないのだろうか。
いや、必ずまた彼と再会をする。
そして、また私は彼と昔の話をするのだろう。
思い出し、紡ぎ、彼を引き留めようとするのだろう。
けど彼は、その私の気持ちには答えてくれない。
きっとまたはぐらかされ…いや、聞く耳も持たないかもしれない。
「あり、旦那だ」
「え?」
総悟くんの視線の先を見れば、銀ちゃんが新八くんと神楽ちゃんと一緒にこちらに歩いてきていて。
「おーい、Aさーん!」
新八くんの声が響く。
「Aアルヨ銀ちゃん!」
「あらほんと。勤務中じゃねぇか」
走ってきた新八くんと神楽ちゃんの後ろから、ダラダラと歩いて来た銀ちゃん。
何故かその時私は、銀ちゃんの顔を見てホッとした。
「まだお仕事ですか?僕達、このまま歩いて帰ろうって言ってて。もしよければ、一緒に帰りませんか?」
その言葉を聞いて、私はすぐ総悟くんを見上げる。
こっちをダラーっと見てきた総悟くんの顔は、嫌そう。
負けじと満面の笑みで対抗すれば、彼は諦めたようにため息をついた。
「うん!帰ります!」
「おーいいな。じゃ行きますか」
そう銀ちゃんは言うと、手を自然と繋いできた。
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お茶(プロフ) - アルムさん» 素敵なコメントありがとうございます!!心の支えでございます涙次回作も宜しければ読んでいただけたら光栄です!ありがとうございました!! (2019年11月8日 23時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アルム(プロフ) - お茶さんこんにちは! 番外編完結おめでとうございます。1シリーズのときからずっと好きで毎日読んでいました。お茶さんの綴る文章、大好きです。毎日お疲れ様です。次回作も楽しみにしています。 (2019年11月8日 23時) (レス) id: 4726a4adc0 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みゃんさん» わぁぁあコメントありがとうございます!続き頑張って書きあげますね!! (2019年9月4日 0時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
みゃん - 一気に読んじゃいました!めっちゃ面白いです!!続きが早く見たいです! (2019年9月3日 22時) (レス) id: 21dc5ec498 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - あくび少女さん» コメントありがとうございます!ニヤニヤ…( -∀-) (2019年9月1日 1時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月9日 2時