箱庭の海7 ページ7
俺が直接会いに行っても、まともな会話をしてくれないことが分かった。
そこで俺は、桜田に詳しい奴に話を聞くことにした。
あいつが唯一心を開いている奴が、田村先生以外にいる。
そうクラスの女子に教えてもらった。
C組の沖田 総悟。
「沖田くんいますかー」
早速クラスに会いに行けば、奴は癖のあるアイマスクを取り、気だるげに俺を見た。
栗色の頭に、中性的な顔立ち。
「なんですかィ」
桜田と違って対応はしてくれるみたいだが、雰囲気はそっくりだ。
姉弟みてぇだなこいつら。
場所を変えたいと言えば露骨に嫌な顔をされた。
だが、仕方なくといった感じで応じてくれて、俺たちは裏庭に足を運んだ。
「で、Aの何を知りたいんですかィ」
石段に座った沖田は、恐ろしく冷たい目でそう言った。
「なんで桜田の話って分かったんだよ」
「最近、坂田銀時が桜田Aにアタックしてるらしい。…噂ってのは広まるのは早いもんですぜィ。それに、俺を呼ぶ男はAの話しか出さねぇから、ですかねィ」
「胸糞わりぃ」と沖田は近くに転がっていた小石を蹴飛ばす。
あれだけ美人なんだ、男は放っておく訳ねぇか。
「沖田くん、桜田さんとなんで仲いいんすか」
素直にそう聞いてみた。
他に気になることはたくさんある。
けど、今はこれしか聞けないと思った。
「なんで、ねィ…。じゃ逆に聞くが、あんたはAのなんですかィ」
「は?」
「お前、この学年じゃイケメン坂田君で有名らしいですねィ。女に不自由してねぇだろ。周りの女に飽きて、高根の花に手出したくなったか?」
次々に言葉を繋げ、先へと話を勝手に進める沖田。
「そんなこと思ってな」
「あんたは、Aの何になりてぇんだ。まさか友達とか言わないですよねィ。あいつの周りに群がるのは汚ェ男ばかりだ。軽い気持ちで近づくんなら、そいつらと同じように痛い目に遭わせてやりますぜィ」
完全に言いくるめられた。
言いたいことだけ言った沖田は、俺の返事など聞かずさっさと行ってしまった。
なんなんだよ、どいつもこいつも。
☕
沖田が言っていたことがどうしても気になった。
あいつの周りに群がるのは、汚ェ男ばかり。
俺が桜田と出会った時も、あいつは男に迫られていた。
無気力で抵抗しないあいつを見て、俺は…。
俺は…何を思ったんだ。
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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時