箱庭の海３０ ページ30
三年の嘉永 美波(ﾖｼﾅｶﾞ ﾐﾅ)先輩。
ずっと遊んでいた先輩だ。
この学校ではトップクラスのルックスで、男子人気が高い。
そんな美波先輩は俺を好いてくれて、俺はよくホテルに呼び出されていた。
だが最近は、美波先輩…いや、遊んでいた女子全ての連絡先を消した。
だから関わっていない。
が、こうしてクラスに来られちまうと…。
「坂田、女遊び辞めたんじゃねえのかよ」
どこからか、そんな声が聞こえた。
…チッ。
まそうなるよな。
先輩は遠慮なくズカズカと教室に入り、俺のそばまで来た。
「銀時くん、やっぱり女の子と遊ぶの辞めたんだね」
声がした方をチラッと見て、余裕そうに笑う美波先輩。
濃いアイラインに、真赤な唇、短ぇスカート、明るい髪色。
どれもこれも校則違反だが。
お嬢様だから教員も下手に口出しできない、厄介な女。
「その代わり、美少女とつるんでるらしいね」
俺の耳元に口を近づけ、美波先輩は囁く。
「お父さんに言えば、桜田 Aを傷つけるのなんて簡単なんだよ」
俺は勢いよく席を立った。
拳を振り上げ、思いっきり殴ろうとする。
落ち着け…落ち着け…！！
自制心を保ち、振り上げた拳を下ろす。
「何が目的なんだよ」
睨みそう聞けば、彼女はニッコリと笑った。
「また遊ぼうよ銀時くん。そしたら、美波は何もしないよ」
それだけ言い残すと、美波先輩は行ってしまった。
ザワザワとする教室。
まだ隣に座っていた土方が、立ち上がりすれ違いざまに呟く。
「…気をつけろよ」
中学の頃、土方の先輩だった美波先輩。
奴は、中学時代かなり親を使っていた美波先輩の下劣な所業を知っている。
「んなの分かってるっつの…」
今まで俺が何もされなかったのは、美波先輩に気に入られてたからだ。
けど、こうなった今では美波先輩が何をするか分からねぇ。
Aに。
Aの事がいっぱいで、美波先輩なんて眼中になかった。
厄介な事になったな…。
次の日から、美波先輩は俺の教室に通うようになった。
休み時間を利用し、昼食も取るように。
「成瀬くんに振られちゃってね〜」
そう、俺の隣に座り弁当を食う美波先輩。
最近よく美波先輩とつるんでいた男子生徒の名前だ。
つまり、今の一番のお気に入りは俺ってわけか。
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作者名：お茶
| 作成日時：2019年4月10日 1時
