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「積極的なんだね。」
「……。」
「ねぇ、退いて。」
小雨が罪の髪を伝い壁に追いやられた精の頬に落ちる
首にナイフを当てられているのにも関わらず全く精の言葉に応じない
少しずつ雨が強くなる
「君と俺が兄弟ってこと、もう聞き飽きたよ。でも確信が持てないじゃん。」
「お前なら真実かどうか分かるだろ。」
精はナイフを下ろし逆の手で罪の頬に手を添える
敵なのにも関わらず罪は驚きも拒否もしないのでゆっくりと顔を寄せ囁いた
「そう……だから、君の目を見せて。」
五月蝿い雨音の中、罪だけに聞こえるような甘い声で
「じゃないと、殺さなくちゃならないの。」
近づいて初めて見えた胸元のたくさんの痕を見て罪は唇を噛む
数歩後ろに下がり自分の瞳を覆う包帯に手を掛けた
雨に濡れて少し重くなった包帯が少しずつ解かれていく
雲が厚くなり周りは薄暗くなる
時折雷が光る
解けきった包帯が風に攫われた
静かに顔をあげた彼の姿に精は息を呑む
「お前になら、殺されたいんだ。」
暗い背景に爛々と雅に輝く両眼に見据えられる
瞳の中で雷光が光り輝き世にも不思議な、常人では持つことも有り得ない美しさ
硬直している精に罪は初めて柔らかく微笑んだ
気味が悪いだろう、そう付け加える
「……綺麗…だね……」
溜息のようにやっと口から出た言葉
頭の回転は早いほうだと思っていたがあまりにも言葉足らずな感想を呟いた自分に驚く
罪は唖然とした後一歩踏み出した
しかし頭上から突っ込んできた人影にそれは遮られる
「…オマエ、ツヨイ…カラ、コロシテヤル」
「っ…ダース…？……まさか黒龍…！」
空に呼び掛けた精の姿は一瞬で消え代わりに片言の男が立ち上がる
「ックソ…！」
罪は前髪で目を隠しバチバチと腕に電気を纏わせる
またもや飛び掛ってきた男をかわし後ろから背骨を狙い殴り飛ばしたが
「は！？ウッソだろオイ…！」
自分と同じくらいの体格にも関わらず手応えが無さすぎるほど軽かった
遠くに吹き飛んだ男の方角から電柱やらが降ってくるのを避ける
空箱のような軽さの体、恐ろしい馬鹿力
そして何より
「……ケケケッ……ヒャハハハハ！！！」
電気で焦げた背中から煙を出しながら歩いてくる姿に罪は相性の悪さを確信した
「…ンだテメェ……全く効いてねぇじゃねぇか…」
質問したところで当然返答が帰ってくるわけでもない
狂ったように笑っている男を背に罪は一時身を引くことに決めた
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作者名：灰猫 | 作成日時：2016年12月7日 5時
