日日是五色【ARS】 (ページ5)

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「Aちゃん、久しぶり」

家に来た智くんは半年前と同じように笑った。

優しい目と柔らかな空気はそのまま。

だけど半年前よりもっと引き締まった体つきをしていたし、少し日にも焼けていた。

ますますかっこよくなっている。

まずい、これはまずい。

このまま沼にはまるみたいに抜け出せなくなったら、私きっと結婚できない。

「私…用事思い出したからちょっと出てくるね」

もうすでにお喋りに夢中になっているお母さんたちにそう告げると、私は玄関に向かった。

「どこ行くの」

智くんが付いて来て言う。

「えっと…コンビニ」
「おれも行く」
「え？ダメダメ」
「なんで」
「なんでって」

智くんと一緒にいない方がいいと思ったから、外に行こうと思ったのに。

とは言えず、並んで歩く。

「いー天気」

まぶしそうに空を見上げる智くんの横顔が、思ったより近くにあって慌てて目をそらす。

コンビニは思ったより近くて、なんとなくお金をおろして飲み物とお菓子を買ったらすぐ用事は終わってしまった。

智くんもチョコとコーヒー買ってる。

「ねえ」

コンビニを出て帰ろうとした私に智くんが声をかけた。

「どっか行こ」
「え？」
「こんないー天気なんだし」
「どっかってどこ？」

「デートしよ」

デデデ、デート？！

内心パニックだったけど、混乱したり焦ったりしてると思われたくない。
落ち着け落ち着け、相手はまだ十代の少年だ。

特に深い意味もないのに断る方が変に意識してるみたいじゃない。

にっこり笑って私は答えた。

「いいよ、どこ行きたいの？」
「んーと。遊園地」

遊園地？！
そんな定番のデートスポットなんてもう何年も行ってない。

返事に詰まる私の手を智くんが引っ張る。

「行こ」

そうして、電車に乗って遊園地まで本当に来てしまった。

「あれ乗りたい」

智くんが指をさしたのは、かなりの高低差を猛スピードで走るジェットコースター。

ちょっと待って、私。

乗り場まで来てしまったけど、私。

「ぎゃあああああ！！」

絶叫系、大の苦手。

もう大人の女性の余裕なんて地の果てまで飛んで行ってしまうほどの本気の叫び声をあげる。

「んははは！Aちゃんすげえ声」

智くんはそんな私を見て涙を流して笑ってる。

あー、終わった。

いろんな意味で終わった。