サンタクロースと恋心【M.A】 ページ28
俺がアルバイトしているピザ屋に限らず、ピザ屋にとってクリスマスはめちゃくちゃ忙しい。
だからクリスマスイブに休みたいなんて、言い出せる訳もなく。
今日が誕生日の俺も、サンタクロースの格好をしてピザを配達している。
本当は俺だって同じ大学に片思いをしてる子が一人や二人いて。
いや一人だけど。
Aは同じゼミで、最初からすごい気が合って何でも話せる仲のいい女友達だった。
だけど一緒にいるうちに、見せないけど努力家なとことか、しっかりしてるけどちょっと抜けてるとことか、涙もろいとことか、いいなって思うようになって。
そろそろ自分の気持ち伝えたいなって思ったりしてて。
クリスマスにどっか行かない？って誘ったりしたかったのに。
なんてことを頭の中でブツブツ文句言いながら、ピザを配達していたら。
「ん？あれって……A？」
俺が好きだって思ってる子。
が。
俺の友達のカズと二人で歩いてた。
なんかちょっといいカンジで。
俺は声もかけずに、というか正確に言うとかけられずにバイクに乗ったまま通りすぎた。
え？
2人ってそういうこと？
……え？
「相葉くん、戻って来るの遅いよ！」
「すいませーん……」
はあ、やってらんない。
だけど次々注文は入る。
楽しそうにパーティしてる子どもたちに、「あ！サンタさんだ！」って言われると、仏頂面でいる訳にもいかず、「メリークリスマス！」って笑っていたものの。
俺の頭ん中は、さっきの2人の後ろ姿でいっぱいだった。
確かにカズも同じゼミでAとも仲がいい。
カズがめちゃくちゃいい奴なのも知ってる。
けど、2人が付き合うのを間近で見るのは正直きつい……
「相葉くん！遅くなっちゃったけど最後にもう一件いい？お友達だよね？」
営業時間ギリギリに飛び込んで来た注文は、よく知ってる住所と名前。
「てんちょー……これ、俺が行かないとダメですか？」
「はあ？何言ってんの。相葉くんのお友達だから相葉くんご指名なのよ。遅くなってもいいからって」
「……ですよね」
重い腰を上げて、バイクを走らせて来たのは、カズが一人暮らししてるアパート。
Aが、はーい、って出てきたら俺立ち直れないよ。
はあああって大きなため息ついてから、インターフォンを押す。
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作者名：つむ
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年9月22日 8時
