君と一緒 【東京喰種re】

12日目 嘘吐き ページ17

「それで、自転車があの雑木林で見つかったことに心当たりはありますか……？」



仕事中……というか事情聴取だから宇井さんは敬語を使っている。 なんだか少し違和感というか壁を感じる話し方でどことなく寂しい。



『えっと、ないです。 数日前から自転車が無くなってるな、とは思ってたんですけど……』



咄嗟に思いついた嘘。



それは架空の喰種を作って"その喰種に自転車をとられた" とかいうベタな話だった。



「なるほどね、たまたま羽風さんの自転車が目に付いて移動手段に使った……」



宇井さんは淡々と紙に私の話を書き留めていく。



ごめんな宇井さん。
うちはやっぱり自分のことがかわいいんやと思う。



何一つ本当のことを言えない。
その事実が鋭く私の心を貫いていく。



「ご協力、ありがとうございました。
盗難されたってことは近辺に喰種が潜んでる可能性が高いのでなるべく1人にはならないでくださいね」



もう一度深々と頭を下げ扉を開けようとした彼に手を伸ばした。



『あ、あの！！！ 』



「他に何かありました？」



『あの！ 敬語じゃなくてもいいです！！！』



咄嗟に出たのは敬語じゃなくていい。



な、何言ってるんやうち。 "捜査官と喰種"
敬語どころかもう会わなくていいくらいやのに。



『それと！！！』



とめどなく溢れていく言葉、それは




『また会えるんよな！！！！』




嘘吐きの言葉じゃなく、正真正銘自分の本心だった。

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