Call My Name ！ IV (ページ4)

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　ようやく唇が離れた頃には佐藤の手も離れてて。誰も何も言えない、祭りにはそぐわない静かな空間に、朱センパイは平然と言ってのけた。

「口約束なら、これで取り消しだな。…………行くぞ黄瀬」

「ッ、センパイ…………、今の＿＿」

「お前と話がしたいんた。………嫌とは言わせないぞ」

　センパイはそれだけ言って歩いた。
　俺は＿＿＿＿集中する視線を受けながらも、センパイに掴まれてる手の温かさに身を委ねて歩いた。

　＊＊＊

　パァ………ン！バァ…………ン！

　俺達は、人波に揉まれてやっとの思いで先程居たベンチに戻ってきた。
　そこで並んで花火を見ている。無言で。

　どちらも何も喋らない。今回は、俺も喋らなかった。正直花火どころじゃない。センパイが俺を迎えに来てくれた。それだけじゃなく、キスまで自分からしてきた。

　分からないことだらけだ。俺はセンパイにキレてしまった。どうでもいいとさえ思っていた。それなのに………嬉しかったんだ、どうしようもなく。未だに唇に感覚が残ってる。夢じゃないんだ。

「…………なあ」

「ふぁい！？」

　不意に、朱センパイに呼ばれた。俺は思わず変な声で答えてしまった。けれどセンパイはそんなことを気にも止めずに、花火をみながら続けた。

「……………お前は、私の事が好きなのか？」

「……………、はい。好きっす」
　

「ッ、それは………慕ってる、なのか？それとも…………恋なのか？」

「…………どっちも、っすね。

　センパイの生き方、かっこいい。憧れる。けど、それと同時に………それが許せなくなることがあるくらい、異性として意識してるっす」

　キスのことに関してじゃないからか、まだ驚いてるからか、言葉は考え無しにスラスラ出た。朱センパイは「そうか」と言って花火を見続けながら、言葉を紡いだ。

「私も…………………お前のことが、好きだ」

「…！」

　パァン！！！！！

　赤い花火が空に大きく咲いた。咲き誇った花火は余韻を残して散り散りになっていく。

「お前の笑顔を見ると、胸が温かくなる、お前が真剣な顔をすると見蕩れる、お前が悲しそうな顔をすると………苦しくなる。

　………お前が他の女と居ると………触るなと思ってしまう。

　私はきっと、お前に恋をしてるんだと思う」