#93 ページ47
＊
｢…………！｣
まるで背に私が居ると分かってるかのようなハッキリとした声。思わず再び木の後ろから盗み見る。黄瀬は頭を掻きながら佐藤さんの下げられた頭を見てた。
その先から覗き見える佐藤さんの呆気に取られた顔。なぜ？と言いたげな顔が見えた。黄瀬の声が鼓膜を揺らす。
「俺、センパイとは付き合えないっす。ごめんなさい」
｢な、どうして………｣
「う〜ん、センパイ、可愛いしレベル高いけどね〜、ほら、他にもいい人いるっすよ」
｢私は黄瀬くんがいいの！｣
「あはは、ありがとう。嬉しいな〜」
｢そうじゃなくて…………！｣
尚食い下がろうとする佐藤さん。完全に聞き流してる黄瀬も黄瀬だけど、すこししつこくないか？
遠すぎて何を言ってるかまではわからないけど未だにウダウダと言っている佐藤さんに少し嫌な気持ちになってると、暫く黙っていた黄瀬が口を開いた。
「ごめんね、俺、好きな人、いるから 」
｢…………！｣
＊ ＊ ＊
｢そうじゃなくて、私は………で、あなたのことが………｣
体育館裏、呼び出された内容は思った通りの内容。ドラマとかでよく見るし今までもこういうことはよくあった。
けどそもそも、見知らぬ人に好きです！告白され、喜んで！となるものなのかな？そりゃノリで付き合ったこともよくあるけど…………少なくとも今はする気は無い。
そんなことを考えながら躱そうとするも今回の女子は骨がある。少し可愛いからだろう。然し途中から"私"＿＿つまり自分が主語の会話になってるのは頂けない。
そこで最終奥義"好きな人がいるの"発言を使った。やっと俺のターンだ。
「………本当は言うつもり無かったけど………好きな人居るし、センパイの気持ちはありがたいけど、受け取れないよ。ごめんね」
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作者名：O | 作成日時：2021年10月29日 16時
