#92 ページ46
＊
キーンコーンカーンコーン。
先生の長い話が終わると、四限目終了のチャイムが鳴る。昼飯の時間だ。朱は終了の礼をみんなとしてから自販機＿＿＿体育館裏の自販機に向かう。
お気に入りのコーヒーがあるのだ。そのコーヒーは普通の自販機には売ってなくて、だから体育のある日は体育館裏に行く。それだけなのだが………
｢………｣
朱の足は、自販機のある体育館裏の1歩手前＿＿近くの木の前で動くのをやめた。自販機の前にはゆるふわパーマのかかったセミロングの可愛い女の子＿＿＿確か同じクラスの＿＿佐藤さんと、長身の金髪頭…間違いなくいつも見ている黄瀬。
二人とも体育着のまま重苦しい空気の中向かい合っていたからつい隠れてしまった。
一体何を＿＿「黄瀬くん、付き合ってください｣…！？
私は佐藤の放った言葉に硬直する。いくら恋愛無関心だった自分でもこれが俗に言う告白だとわかる。佐藤さんは続ける。
｢えっと、………体育の時間、いつも同じだったからそれで気になってて………、それだけじゃなくて、いつも教室に来てるの見てて………だから、付き合ってください！｣
佐藤さんはそこで言葉を切って頭を下げた。………いつもクラスでキャーキャーとバカ騒ぎしているというのに、今はすごく真剣なのが遠目からでも伝わってきた。
…………背を向けている黄瀬が、どんな表情をしているのかわからない。もしかしたら、いつもみたいな笑みを浮かべているのかも………、なんて、そんなことを考えると胸が痛い。
「えっと、＿＿＿ 」
答えようとする黄瀬。
嫌だ、聞きたくない。
そう思ったから、背を向け戻ろうとした時。
「………ごめんね。センパイとは付き合えないっす」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：O | 作成日時：2021年10月29日 16時
